1. ホーム>
  2. 瓜連まちの風土記 第22巻

瓜連まちの風土記 第22巻

瓜連まちの風土記 第22巻

古徳沼と自然

 

【古徳沼の野鳥の声】
生命のミュージアム

 多様な生命を集め、結びつける
 水辺のチカラを感じることができる
22表紙
◆もともと古徳沼は、農業用のため池だった。1966年に3羽のハクチョウが飛来した。
◆餌付けに成功してから年々数が増え、現在ではハクチョウの飛来地として有名になっている。
◆古徳沼の背後には、護岸工事がされていない自然林が形成されている。バードウォッチングや写真撮影には最適な空間である。
◆白鳥以外にもマガモ・カルガモ・ホシハジロ・キンクロハジロなどを観察することができる。

古徳沼は静かな瓜連のまちの中では少し
変わった場所である。
1966年に3羽の白鳥が飛来してから、
まちの有志が餌づけを重ね、日本有数の
白鳥の飛来地として名を馳せるようになった。
そして、ふだんは、静かなまちが、その時期は
大きなにぎわいをみせるようになった。
22-03

古徳沼は元々、江戸時代の人々がつくった
農業用の大きなため池であり、最初から人の
手によってつくられて整備されていたため、
人の手を入れやすい環境であったともいえる。
22-05

現在、沼のまわりは通年きれいに整備され
たくさんの自然に囲まれている。
これは白鳥の飛来を助けるよう、毎年まちの
人々によって行われる、年に1度の大がかりな
周辺の山林伐採や草むしり、日々の清掃に
よって保たれているもので、決して野放しに
された自然ではない。
22-07

実際にそこに立つとわかるが、古徳沼には
そういった適度に人の手が入った快適な自然
といった側面がある。
22-09

日々の清掃活動とは別に、年に1度の古徳沼
周辺清掃は田畑の繁忙期を避けた3月下旬、
町中総出で行われ、消防や警察等行政をも
巻き込んだまちの一大事業となっている。
22-11

はじめは個人で始めた白鳥の餌づけが、
飛来数の増加に伴い、町外からのバード
ウォッチャーを多く集めるようになったことで、
まちの事業に転向していった側面があるようだ。
ともあれ古徳沼周辺環境の維持・管理は瓜連の
人々の善意と努力によって保たれていると
いってよい。
22-13

適度に人の手が入った古徳沼は白鳥だけでなく、
様々な生き物にとって居心地のいい空間だ。
鳥だけでもマガモ・カルガモ・ホシハジロ・
キンクロハジロなどバラエティー豊かに集まる。
22-15

人に馴れていることもあって、理想的なバード
ウォッチングが可能となっている。
鳥以外にも小さな動物たちが顔を見せることも
あり、豊かな水辺の生物多様性が実現されて
いる。
22-17

湖畔にはベンチがあり、近所の生活者たちや、
訪れた人々の憩いの場となっている。
白鳥の飛来時期だけでなく、整備された水辺は
そこで生活する人々にとっても大切な場所となり、
ふらりと訪れた人間をも魅了する魅力にあふれて
いる。
22-19

実際初めてそこに訪れた際、白鳥とは関係なく、
居心地のいい場所だと感じた。
特別な手段を講じていなくても、整備された環境
ということで自然と集まる生き物が数多く存在し、
それらを眺めているだけでも飽きない。
22-21

特に店や箱モノの施設があるわけではなく、
そこに集ったまちの人達と話をしたり、動物たちの
生き生きとした姿に接する場であるということが
重要なのだ。
22-23

人との健全なコミュニケーション、言葉を介さない
動物たちからの癒やしで、疲れた心に栄養が
入り、明日への元気がわいてくる。
ここは人間だけでなく、野外の生き物すべてに
開かれている魂のサロンなのだ。
22-25

白鳥の飛来はきっかけだったに過ぎないの
かもしれない。
今、瓜連の人々が古徳沼を愛し、心を込めて
整備することで救われている生き物、人の心は
少なくないかもしれないと思うのである。
22-27

 

 

 2015年3月20日 発行
著 者 :西野 万里子(日本地域資源学会)
写 真 :森作 勇哉(常磐大学コミュニティ文化学科)
監 修 :塚原 正彦 常磐大学教授
第21巻 古徳沼  戻  次 第23巻 古徳沼の水辺の景観と植物