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瓜連まちの風土記 第29巻

瓜連まちの風土記 第29巻

静神社と静駅

 

【手接足尾神社(てつぎあしおじんじゃ】
ありがとうの気持ちを
展示した博物館

 ひっそりとたたずむ森の奥で、手と足に
 感謝する気持ちがわきおこる
29表紙
◆瓜連のような農村社会では、大地からモノをうみだす手と足は大切にされてきた。そして、手と足の安全、健康の守護神として守られてきたのが手接足尾神社である。
◆人々が祈願した際に持ち寄った「手差し」「草履」(ぞうり)などをそなえて願をかける風習は、いまだに生き続けている。
◆小さな暗い森にひっそりとたたずむ神社に差しこむ光がふるさとの人々が持ち寄ったモノたちに反射してきらきらかがやいている。

静神社の山の裏側にひっそりと存在している
神社がある。それは、手接足尾神社という。
私がここを訪れるのは、これで2度目になる。
季節を超えたこの神社のたたずまいをもう一度
記憶にとどめておきたくて、またきてしまった。
29-03

静神社の本殿の裏に
「手接足尾神社入口」
と書かれた小さな案内板がある。
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そこは、黒い森へ向かって果てしないほど
遠くへ続く細い山道の入り口になっている。
はじめてそれを目にした人は、その先へすすむ
ことはきっとちゅうちょしてしまうほどの小さな
山道である。
実際に私も、はじめて訪れたその時、ある老夫婦
に出あわなければきっとそうしていただろう。
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二人は手足を健康にしてくれる神様がいるから
ということで、古河から静神社にお参りにきたの
だと話してくれた。
さっきみた「案内板」のことを伝えて、さっきの
山道の入り口に戻り、一緒に「手接足尾神社」に
行ってみることにした。
 

わずかな光が差し込むだけの黒い森の小さな
道を歩くのは、とても不安な気分になった。
しかし、歩いて1分ほどで小さな鳥居の姿を
目にすることができる。
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人の気配をまったく感じさせない黒い森へ続く
山道も、森の中に隠れるように静かにたたずむ
鳥居や社が、その神聖さをより引き立て、あたり
の空気を浄化しているようにそびえたっている。
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「なにごとの おはしますかは 知らねども
 かたじけなさに 涙こぼるる」
という歌を口ずさんでいた自分がいた。
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手接足尾神社には手足の健康と安全を守る
神様が祀られている。
本殿の脇には、たくさんの松葉杖、ギブス、
小さな子供用の靴、そして千羽鶴が積みあげ
られている。
それらは、まぎれもなく手足の健康を願って、
この場所を訪れた人々の願いや感謝の足あと
である。
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古いものから新しいものまで、いろいろなカタチで
奉納され、積みあげられたそれをみていると、
この小さな神社が、たくさんの人々の心のより
どころとなってきたことを実感することができる。
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そして、神社には、人々の思いや願いが
集まって、新しいチカラを育むという
役割もあることに気づかせてくれる。
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昔ながらの商店街、きれいにガーデニング
された庭、民家の細道にある小さな神社など、
瓜連には、この土地で生きている人々が守って
きたものがあるように思う。手接足尾神社も
その中の1つであろう。
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昔から今日までずっと人々に守られてきた
この町のたたずまいは、よそでは感じることが
できない独特な雰囲気がある。
それこそが瓜連ならではの宝物で、誇りである
と思う。
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そんな宝物たちを、これからも変わらないで
守り続けてほしいと私は期待している。
数年後またこの町を訪れても、そこはどこか
懐かしい瓜連のまちがそこに存在している
ことを望まずにはいられない。
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 2015年3月20日 発行
著 者 :宗形 朱梨(常磐大学コミュニティ文化学科)
写 真 :森作 勇哉(常磐大学コミュニティ文化学科)
監 修 :塚原 正彦 常磐大学教授
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