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瓜連まちの風土記 第40巻

瓜連まちの風土記 第40巻

北城地区と田園風景

 

【瓜連の生活者のあいさつ】
人を結ぶあいさつ博物館

 人と人とを結び絆を育むヒントがみつかる
40表紙
◆瓜連を歩いていると、いつも決まって近所の人々が気軽にあいさつしながら、声をかけふれあっている光景を目にすることができる。
◆瓜連を歩き、人々とかかわることで、人と人を結ぶきっかけのつくり方のヒントを得ることができる。
◆そして、あたたかい思いやりが地域社会を守るチカラになっていることに気づくことができる。

大きな建物がなく果てしなく大地がひろがる
瓜連では地図を片手に大きな木とすでに
シャッターを閉じてしまった商店を目印に
歩かなければならない。
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道がいり組んでくると、地図を持っていても、
なぜかとても心もとなくなってしまう。
そこで、むこうの畑で花を摘んでいる
おばさんに道を聞いてみた。
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思いきって声をかけてみた。
するとおばさんは、大勢で歩いている私たちに
少し驚きながらも「どうしました」とやさしく
こたえてくれた。お互いの緊張が解け、近くに
ある井戸や祠の裏で休んでいる猫のコトに
話題がひろがりはじめる。
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庭先で仕事をしていたおじさんに、桂木稲荷
神社の場所を聞いてみた。
彼は、わざわざ家から持って来た地図をひろげ、
その上に目印をつけながら、いろいろなルートを
教えてくれた。
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森を抜け、きついのぼり坂の上にある住宅地の
向こうにある北城稲荷神社を探していると、
離れてじゃがいもの芽をとっていたおばあさんに
お話を聞いた。
 

彼女は、稲荷神社には、民家の脇からのびる
小さな道を抜けていくといいと教えてくれた。
小さな道で見落としやすいからと大変心配して
くれた。
私たちが北城稲荷神社に向かい歩きはじめて
後ろを振り返ると、坂の下までわたしたちを
見送りにきてくれた彼女がみえた。
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彼女が心配したとおり、きつい坂道をのぼるのが
精一杯になってしまった私たちは、あれほど注意
してくれたのに、曲がらなければならなかった道に
気づくことができないで、通り過ぎてしまっていた。
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振り返ってみると、後ろから見守っていた
おばあさんが急な坂を懸命にのぼっている
のがみえた。
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若い私たちですら一歩一歩踏みしめ、息を切らす
ような急な坂を、おばあさんにかけ足でのぼらせ
てはもうしわけないという気持ちでいっぱいに
なった私たちは、せめておばあさんの走る距離を
ちぢめようと全速力で走り寄った。
彼女のおかげもあって私たちは、何とか北城稲荷
神社にたどり着くことができた。
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北城稲荷神社の写真を撮っている間、
おばあさんの親身なやさしさがうれしかった。
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度々道に迷ってしまう私たちは、それ幸いで
いろんな人に道を聞きながらコミュニケーション
するコトに積極的になっていった。
車で出かけようとしていた家族を引き留めて
しまったり、食事中に家に押しかけてしまったり
たくさんの失礼をしでかしてしまった。
それにもかかわらず、瓜連でかかわる人は
みんなていねいに対応してくれた。
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瓜連の散歩も終盤にさしかかり、すっかり疲れ
きって歩く私たちに、自転車ですれちがう中学生
が「こんにちは」とあいさつしてくれた。普段から
近所の人と声をかけあっているからだろう。
じつに慣れた、明るい声が響きあった。私たちは、
疲れた気分で下を向いていたことにハッと気づい
て、あわてて全員であいさつを返した。
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このまちで目があったほとんどの人は、微笑み
ながら「こんにちは」と言ってくれる。
ふと気づくと、そういえばスタート地点から
ひんぱんに目に入ってきた旗には、「あいさつを
しよう」と書かれていた。
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 2015年3月20日 発行
著 者 :楯 佳織(常磐大学コミュニティ文化学科)
写 真 :森作 勇哉(常磐大学コミュニティ文化学科)
監 修 :塚原 正彦 常磐大学教授
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