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瓜連まちの風土記 第47巻

瓜連まちの風土記 第47巻

人とシゴト

 

【瓜連の雰囲気】
居ごこちがいい散歩
ミュージアム

 小さな風景に身の丈で生きる幸せのカタチが
 きざみこまれている
47表紙
◆合併する前、一番小さなまちであった瓜連は、ビルや大型商業施設など視界をさえぎるものが何もない。
◆大空と大地がひろがる瓜連のまちには、身の丈でせいいっぱい生きる人々の幸せのカタチがきざみこまれている。
◆瓜連のまちをそぞろ歩いて小さな風景をコレクションすると幸せミュージアムになる。

瓜連というまちについて、私は今まで何も
知らなかった。まち歩きで4回訪れ、それぞれ
違ったエリアを主に歩いたが、4回とも違った
印象を持ち、違った発見があった。けれど、
4回を通してそのまち全体を漂う空気のような
ものをぼんやりとではあるけれどつかむことが
できた。まだまだ私たちの知らない何かが
かくれていそうなこの土地の片鱗をお見せ
したいと思う。
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初めて瓜連を訪れた日、最初ということで
まずはうりづらロマンロードを一人でたどった。
うりづらロマンロードとは、瓜連駅からスタート
し、常福寺、弘願寺、静のムクの木、静神社、
静峰ふるさと公園、斉藤監物(けんもつ)の墓、
古徳沼、瓜連駅と周回する散歩道、いばらき
ヘルスロードの一つである。所々にある、
小さな看板を頼りに歩いてみた。
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最初の目的地は常福寺である。門のすぐ隣に
普通の住宅などが建っている。生活と寺院が
結びついている光景が印象的であった。門を
3つくぐるとようやく本堂のある敷地に到着した。
常福寺はもともと瓜連城址だった場所に移転
して再建されたお寺である。実際に歩いてみて、
本堂は老朽化などの理由で2回再建されている。
場所を変え、形を変え、こうして現在まで受け
継がれてきたお寺であることを実感した。
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2か所目に行く途中で素鵞(そが)神社と静駅に
立ち寄ってみた。素鵞神社は木々に囲まれた
小さな神社でとても静かな雰囲気だった。あとで
わかったことなのだが、正式な入口は別のところ
にあった。今回はさらっと眺めるだけで通過した。
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静駅は無人の小さな駅である。しかも駅舎すら
ない。こんな小さな無人駅は今ではかなり珍しい
のではないだろうか。不便そうではあるが、
たまに利用する分にはちょっと特別な気分を
味わえて良いかもしれない。
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2か所目の目的地は弘願寺である。華美な感じ
はなく落ち着いた雰囲気で、よく整備された境内
は散歩の途中に立ち寄って一息つくのに丁度
良い場所だった。かつては静神社の境内に
あったお寺で、桜の木やくすぐり地蔵は静神社
から持ってきたものである。体の病める個所
身代わりになってくれるくすぐり地蔵には今でも
多くの人がお参りに来るそうだ。
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2014年6月29日(日)朝方台風が直撃した
けれど、歩き始める頃にはすっかり雨もやんで
いた。今回は、古徳沼を目指して歩いた。
冬には白鳥が訪れる古徳沼だが、今の時期は
鴨が数羽いるだけだった。時期によっては様々
な種類の鳥が見られるらしい。古徳沼は長い間
農業用のため池として利用されており、今でも
灌漑(かんがい)を行っている。
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天気のせいか時期のせいか、それともいつも
なのか、人の気配はほとんどなく静かだった。
この場所は居ごこちがよく、一人で過ごすのに
向いていると私は感じた。日常生活に疲れた時、
誰にも邪魔されず、心静かに過ごしたい時に
最適だろう。
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まわりを見ていると、古徳沼の向かい側に
「古徳城址」と書かれた看板と奥へ続く階段が
見えた。草木におおわれていたため昇るのは
断念したが、こんな深い深い森の奥にお城が
あったらしい。時を超えたいろいろなシーンが
想像できわくわくした。
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少しづつ天気は回復し、晴れ間がみえてきた。
その景色を楽しみながらLOG FORTへ向かった。
LOG FORTは生活雑貨や木製品、無垢材の
家具の販売・木工教室・建築やリフォームまで
行っているお店である。木造の温かみのある
店内は、この辺りにしては新しく若い人にも
喜ばれそうな雑貨や家具が並んでいた。
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一見、これまでに見てきた瓜連のまちの魅力とは
ずいぶんイメージが違うように感じたが、よく
考えてみれば木造の家や家具は自然の豊かな
この土地によくなじむだろう。LOG FORTは瓜連
の新たな魅力を生み出す鍵を握っているかも
しれない。
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2014年8月3日(日)今回は人々の生活空間の
魅力を探すことを目的に、駅周辺の商店街を
歩いた。これまでの観光スポットのような場所は
一切なかったが、目を凝らしながら歩き始めると
周りにあるあれもこれもが興味の対象として目に
入ってきた。気になった看板、住宅、お店など、
これまでとは違った角度から風景を見て、この
まちの表面的な部分だけでなく、もっと深い部分
に触れることができたような気がした。
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瓜連はいつ来ても人通りが少なく静かで穏やか
な土地だった。それはこのまちの雰囲気にとても
合っていたし、私は好ましく感じた。ここは自然も
建物も昔のまま残っていて、まち全体から歴史を
感じることができる。
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しかし、決して時代に取り残されているわけでは
なく、伝統を重んじながら、未来に向かって
ゆっくりと進んでいるまちだった。一度だけ、下校
途中の小学生の集団とすれ違ったことがあった。
ここで暮らす小学生達は、自分達のまちをどう
思っているのだろうか。
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いつかこの場所に不満を覚える時が来るのだろう
か。それでもここで育った記憶を大切にしてほしい
と思う。青空の下を歩く小学生達は、とても元気で
楽しそうだった。この光景がこの先もずっと残って
いくと良いと思った。
 

4回のまち歩きをとおして、瓜連の様々な場所を
訪れることができたが、1回目に歩いたうりづら
ロマンロードはまだ行けていない所が4か所も
ある。それ以外にも、瓜連の魅力を秘めている
場所、おもしろい発見ができそうな場所はきっと
まだたくさんあるのだろう。今まで名前も知らな
かったような土地とこうして出会い、興味を持つ
ことができて良かった。機会があれば残りの
4か所も訪れたいと思う。
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 2015年3月20日 発行
著 者 :海野 栞(常磐大学コミュニティ文化学科)
写 真 :森作 勇哉(常磐大学コミュニティ文化学科)
デザイン :宗形 朱梨(常磐大学コミュニティ文化学科)
監 修 :塚原 正彦 常磐大学教授
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