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額田まちの風土記 第16巻

額田まちの風土記 第16巻

小田倉工務店

 

手のチカラで幸せを育む家をつくる 額田16-表

家族が毎日すごす家は、
幸せの創造装置である。
「大工とは、それぞれの家族の
思いを読み取りながら、依頼者の
家族のために100年使える
家づくりを目指している。」

額田16-3

そう語るのは、
額田の大工名人、
小田倉敏行さんである。

額田16-5

工房の奥で作業していた
小田倉さんが
笑顔でむかえてくれた。
小田倉さんは、15歳で
大工の世界に足をふみ入れ、
25歳で棟梁になった。
これまで何件もの家を手のチカラ
だけでつくりあげてきたのだ。

額田16-7

小田倉工務店には、さまざまな
材木と道具があふれている。
加工された材木には、「い」「は」と
ひらがな文字が書かれている。
「このひらがなは、何ですか?」
「あ~これは、どれをどこに
組みあわせるかという順番を
書いているんだ。」

額田16-9

なるほどと感心し、その柱の木に
目を向けると多くの文字が
書かれていたことに気づく。
「この梁を見てくれ、こんなに幅が
あるものはめずらしいんだ。」と
ニコニコと持っていたメジャーで
木の幅をはかりながらその丈夫さを
教えてくれた。
小田倉さんの材木へのこだわりを
肌で感じた瞬間であった。

額田16-11

小田倉さんは手間のかかる
無垢の材木を使った家づくりに
こだわり続けてきた。
無垢の材木を使った住宅は、
100年は持つし、
なおかつ安全であるからだ。

額田16-13

こわす前の家の梁に使われていた
思い出の古木を使ってほしいという
クライアントの注文にこたえ、
再生している材木を指さしながら、
「木は生きているから、カンナで
けずれば新品になる。」と
話してくれた。

額田16-15

加工に手間がかかり、
温度と湿度の状態で伸び縮み
してしまう無垢材をあつかうには、
技もいれば、根気もいる。
それに何より時間がかかる。
だから、メーカーは敬遠する。
そして職人もいなくなる。

額田16-17

手間を惜しまないで
モノづくりにはげむ小田倉さんは、
素材選びにエネルギーを費やす。
いつまでも使い続け、
安心で安全な家をつくる
という大工の使命を果たしたいから。

額田16-19

半世紀もの時を超える経験が蓄積した
小田倉さんは、木のチカラを知り、
思いどおりのカタチを
つくることができる大工である。
小田倉さんの魔法の手は、
大工の枠を飛びこえて、
家具屋にも、彫り師にもなる。
小田倉さんとの話はつきるどころか、
小田倉さんの長年の体験が、
頭の中で映像化され、
気づいたら私も
夢中になって聞いていた。

額田16-21

2011年の東日本大震災で
額田のまちの神社仏閣も
いくつか倒壊した。
小田倉さんは、
その再建をかってでた。

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大手建築会社が
シミュレーションできない
再建プランを
たった1人の知恵と力で
やってのけたのだ。
大工の心意気と経験は、
科学技術をしのいだのである。

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「『大工と雀は軒で鳴く』のだ。
それほどまでに
大工はむずかしいものなんだよ。」
小田倉さんの長年の経験と苦労が
その表情からうかがえた。
大工という仕事にプライドを持って
生きる小田倉さんの生きる哲学に
私は感銘を受けた。

額田16-27

 

 

 2017年2月20日 初版第1刷発行
取 材 :久野 明日輝
著 者 :久野 明日輝
写 真 :久野 明日輝
編 集 :畑岡 祐花
発行者 :日本地域資源学会
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