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額田まちの風土記 第19巻

額田まちの風土記 第19巻

ヘアーサロン関

 

顔も心もきれいになる魔法のミュージアム 額田19-表

髪を切り、ひげをそり、
身だしなみを整え、
気分をリフレッシュする。
それが理容店の役割である。
ところが、外見だけでなく
心をもきれいにする魔法で、
訪れる人を元気にする
魔法のミュージアムが額田にある。

額田19-3

額田の1本の路地を歩いていると、
赤、青、の渦を巻いている
サインポールを見つけた。
上を見あげると、
こげ茶色の外装にたて書きで
ヘアーサロンせきと記してある。

額田19-5

ドアに手をかけ、ゆっくり開いて
入ると、「いらっしゃいませ。」の
明るい声にむかえられた。
目の前には、
ヘアサロンのコースが書いてある
プレートとお会計場がある。
その右手に
テーブルと4つの椅子がおいてあり、
窓からは明るい光がさしこんでいる。

額田19-7

正面には3つのセットチェアがあり、
鏡の上のおしゃれな
ブラケットライトが光を放ち
空間全体がかがやいている。

額田19-9

「どうぞ、すわってください。」と
お母さんがテーブルに私を案内し、
白いきれいなマグカップに
コーヒーを入れてくださった。
あたたかいコーヒーを一口飲んで、
窓から路地の方をみると、
お客さんがやってきた。

額田19-11

お客さんをむかえると、
お父さんのカットからはじまる。
ハサミの使い方が
あざやかで小気味良い。
あっという間に
お父さんのカットが終わる。
さっきまでコーヒーをいれていた
お母さんが登場してきて、
ヘッドマッサージをはじめる。
その次に、ヒゲをそるのは
娘さんの役割である。
親子が暗黙の段取りをこなし、
またたく間にキレイに変身できる。

額田19-13

その段取りが、
リズミカルで実に心地よい。
この段取りこそ、
ミュージアムであるのは
いうまでもない。

額田19-15

価値観が多様化した現代では、
世代ごとにおしゃれがちがう。
関サロンがすごいのは、
世代がちがう親子が、
それぞれの世代の志向にあわせて、
新しいサービスを積極的に
展開しているところにある。

額田19-17

東京で理容を学んできた
2人の娘さんは、
「まつげパーマ」
「ヘッドマッサージ」など
都会の美容院が展開している
それを理容店の強みをいかした
関サロンならではのサービスに
仕あげ、挑戦している。
彼女たちのそういう価値観に
共感したのだろう。
関サロンには、
女性客が増えはじめているという。
新しい風が
額田のまちに吹きはじめている。

額田19-19

お店の中は、お母さんが
入れてくれるコーヒーの香りが
来た人を心地よくさせる。
その雰囲気にのまれるように、
人が次々にやってきては、
自然とテーブルを囲みはじめる。
近所の人たちがやってきては、
話のタネをまいて行く。

額田19-21

私が取材している途中に、
ヤクルトレディがやってきた。
ヤクルトを売りながらも
話をはずませる。
忙しい合間をぬいながら、
お母さんは、
ここに来たお客さんに
コーヒーを入れてくれる。
話の輪が次々につながり、
みんなで盛りあがる。
あたたかな笑い声が
店内にあふれている。

額田19-23

さっききたお客さんの
カットが終わった。
お客さんはきれいになった。
そして、お母さんが入れてくれた
コーヒーをいただいて会話に加わる。
彼は、お店にやってきた時よりも
もっとステキな笑顔にあふれていた。

額田19-25

笑顔がステキなお父さん、お母さん、
そして美人な2人の娘さん。

ヘアーサロンせきは、
体も心もきれいにする
魔法のミュージアムである。

帰り際に、ふと鏡に目を向ける。
今までに見たことのないくらいに、
私は満面の笑みになっていた。

額田19-27

 

 

 2017年2月20日 初版第1刷発行
取 材 :久野 明日輝
著 者 :久野 明日輝
写 真 :久野 明日輝
編 集 :畑岡 祐花
発行者 :日本地域資源学会
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