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額田まちの風土記 第24巻

額田まちの風土記 第24巻

なか野ローズガーデン

 

花と暮らし人に寄りそうお庭 額田24-表

額田の住宅街に、
かくれたバラ園がある。
バラが咲く季節になると、
別世界が出現する。
 

細い道を抜けていくと、
「なか野ガーデン」
と書かれた可愛らしい看板を
目にすることができる。
一見しただけでは、
個人の住宅のようにみえるが、
その先の庭に足をふみ入れると、
雑木林風の植え込みの向こうに、
芝生が広がっていた。
このバラ園の持ち主は、
中野さんご夫婦である。

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この庭には、バラだけではなく、
クレマチスやヤマボウシ、
サクラなどが植栽されている。
同じ背たけのバラを植える
お庭が多い中、庭を見る人に、
できるだけたくさんの不思議を
感じてもらうため、高さをかえたり、
たくさんの種類のバラや
その他の花々を植えて
庭の雰囲気づくりに配慮している。
お客さんからはよく
「この庭は飽きない庭だね」
と言われるそうだ。

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奥さんは動物が好きで、
フクロウやリス、アヒルなどの置物を
お庭のあちらこちらに住まわせている。
緑が増える季節になると、
かくれひそんでいる動物たちを
探すのが楽しみになるという。

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「こんな風にやりたいな」と
イメージしながら手入れするのが
大好きなのは奥さんで、
植物にはあまり興味はないけれど、
施工をするのが、
ご主人の役割になっている。
植物の消毒と庭の草刈りなどの
機械を使う作業は、
ご主人の担当になる。
「やることがいっぱいあるというのは、
幸せなこと。」と奥さんは語る。
 

庭づくりをはじめて
今年で17年がたった。
はじめたきっかけは、
子どもの頃から木が好きだったから。
常陸太田市里美と那珂市額田を行き来
して、2か所で庭づくりをしていた。
はじめは里美でバラの苗木を10本ほど
育て、バラの香りの良さに気づき、
このバラガーデンが誕生したという。
 

駐車場がせまいのがいやで、
車がどこでも通れるようにするために
以前は畑だった広い敷地に、
木と木との間隔をひろくあけて
植えていった。
そして、3年ぐらい前から
お客さんが来るようになった。
東京や仙台、沖縄から来るお客さんや
10回以上も足を運ぶリピーターもいる。
また、
デイサービスの方が車いすで来たり、
庭が広いため老人ホームの方たちが
車に乗ったまま見学に来ることもある。

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早咲きと遅咲きのバラがあり、
バラ園が公開になる5月下旬から
6月下旬の間に何度も足を運ぶことで、
種類がちがうバラを
楽しむことができる。

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お庭の中には、
テーブルとイスが
たくさんおかれている。
なか野ガーデンに来園されたお客さん
みんなにアイスコーヒーを提供し、
座ってお茶ができるようにしている。

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「来てくれた方には、みんなにゆっくり
してもらいたい。『忙しいから』といって
すぐに帰ってしまいそうなお客さんにも
呼びかけて、飲み物を出したり、
座れるところを
いっぱいつくってあげるの。」
と奥さんがおっしゃっていた。
その奥さんの心づかいは、
花にも同じだけ注がれる。
 

「1つひとつ大事に手入れされている
草花を見ていると、
自分も手抜きしたくないと思う。
最初はこの花は良くないからいらないとか、
えこひいきしていた。
でも、バラの気持ちになってみると、
差別されるのもいやだろうし、
自分も差別をうけたらいやだから、
考えを変えてきた。
これはこれで地味だけど
大切にしてあげようと思い、
いまではどの花も同じように
大切にするようになった。
 

いまや、
なか野ガーデンに植えられている
バラの種類は300以上になる。
最近は寄せ植えで、
色別の3つのミニバラを
プランターに植えることで、
キレイに咲くそうだ。
花は正直で、
手入れをしないと咲いてくれない。
 

手入れが好きとはいっても、
大変なことには変わりはない。
しかし、1年かけて
手入れをかかさず行うことで、
年に1度、
キレイな花を咲かせてくれる。
そして、それを見に来てくれた
お客さんが喜んでくれる。
このときに今までの苦労が報われて、
庭づくりに情熱を捧げる奥さんの
心にも喜びの花が咲くのだろう。
 

個人経営の大変さは、
お金のやりくりである。
安い苗木で、多くの種類を取り入れ、
消毒液は価格が高いために、
安い農薬をうまく利用し、
手入れをしてキレイな花を咲かせる。
植物を育てるうえではかかせない、
剪定・肥料・消毒という工程の中で
お金のやりくりが重要になってくる。

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「バラを見るために、1年に1回で、
もっとも良い状態のときに
来てもらいたい。
私たちも一生懸命良い状態にするから、
お花もがんばって咲いてくれた時に
皆来てくれるとうれしい」
 

どこの家も後継者がいないのが、
いま額田のまちがかかえている
最大の問題である。
中野さん夫婦は、
「剪定を見たいという人や
冬場はどのような管理をしているのか
などが気になる人がいれば、
そういう人に継いでもらいたい。」
と考えている。
 

バラが咲く1か月のために、
残りの11か月を努力する。
それをしっかりやりとげるご夫婦と
植物に愛情を注ぐ奥さんの姿に、
私は感動した。

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 2017年2月6日 初版第1刷発行
取 材 :畑岡 祐花
著 者 :畑岡 祐花
編 集 :畑岡 祐花
発行者 :日本地域資源学会
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