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瓜連まちの風土記 第4巻

瓜連まちの風土記 第4巻

瓜連のまちと常福寺

 

【千葉酒店】
幸せをよぶ魔法のブレンドで
夢の香りを味わう博物館


 おいしいコーヒーに情熱を注いだ
 一人の男が夢をかけ、きわめた技から
 夢に生きるロマンに気づくことができる
04表紙
◆遠い昔から酒は「幸せ」をおくりあうコミュニケーションの道具であった。
◆酒屋のあととりが、自ら磨きあげた知恵と技でみんなに「幸せ」をお届けしようと考え、独学でコーヒー豆をみきわめ、
焙煎を学び、とびきり上等のブレンドをうみだした。
◆彼と出あい、魔法のコーヒーを口にすれば、コーヒーがもつ知とその味わいの深さとふるさとのために生きる男のロマンに
驚かされるだろう。

瓜連駅からほど近い、
小さな酒店に立ち寄ってみた。

昭和10年(1935年)創業の千葉酒店は、
三代目の千葉孝之さんが継いでいる。

コーヒー豆が入った壺と大きな焙煎機が
とても印象的なこのお店は、
なぜか酒店である。
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コーヒーと酒の結びつきを
千葉さんに尋ねてみた。

「コーヒーが好きだから」

というストレートな答えに、
かえって納得してしまった。
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コーヒーの商いは
最近になってスタートしたという。

「お客様に納得して買ってもらいたい」

それにこだわってきた千葉さんは
お店に来たお客さんにお酒を飲んでもらい
満足してもらってから販売している
そのスタイルにこだわり、
それを追求してきた。
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道路交通法が改正され、飲酒運転など
お酒への規制が厳しくなった。
お酒の消費は落ち込み、全国の酒店が
苦境にたたされてしまった。

その逆境を克服するため、お酒の代わりに
千葉さんがチカラを注いだのは
もともと大好きであったコーヒーであった。
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コーヒーの研究に足をふみいれ
おいしいコーヒーを徹底的に追求し
コーヒー豆を選び、保存する知識を吸収し
コーヒーをブレンドし、煎る技をみがき
コーヒーを語ることができる知恵を
頭と足を使い、独学で身体にたたきこんだ。 

そして、大好きだったコーヒーを
シゴトにしてしまった。
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千葉酒店ではコーヒーを試飲させてくれる。
試飲といっても、手間をかけ、
本気のコーヒーを飲ませる。

お客さんが選んだコーヒー豆を
その場で挽く、
そして、挽き立てのコーヒー豆を
ハンドドリップでいれてくれる。
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コーヒーの試飲がはじまると、
お店はたちまち、コーヒーの香りで充満し、
居心地が良い空気につつまれる。
私は、普段コーヒーを口にしないし、
ブラックで飲むことはない。

今回いれてもらった
「七運ブレンド」というコーヒーは、
酸味が強く、とても飲みやすかった。
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私は、うまれてはじめて、
コーヒー体験をすることができた。
そして、コーヒーは、見て、香りにふれ、
味わい、そして知るという要素が
結びついてはじめて楽しめるステキな文化
であると実感することができた。

千葉酒店は、コーヒーの文化を
実体験させてくれるミュージアムであった。
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近年、コンビニやスーパーが増えてしまい、
千葉酒店のような地元の酒屋の売り上げは
下がり続けている。

千葉酒店の本業のお酒の方でも、
こだわりを持って品質の高い商品を
そろえ事業を展開している。
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ナショナルブランドが圧倒的なシェアを
確保しているビールや発泡酒とはちがい、
飲む人のこだわるワインや
日本酒の分野に限って、こだわりを持つ
地域の酒屋が生き残る可能性があると
その思いをお話してくれた。
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千葉酒店は「吟奏の会」という
酒販店のグループに加盟している。

「吟奏の会」では、会のコンセプトに
そって厳選したお酒を販売している。

こだわり商品を並べているのは、
お客さんに満足してもらいたいからである。
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お客さんがどう思うか、
それを一番に考えながら、
良いモノを見つけて、
品ぞろえをして、
お客さんにたくさんの選択権を与えたい
という千葉さんのお話が、
いつまでも心に残った。
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こだわりが無ければコンビニやスーパーとの
差別化はできない。こだわりをおしつける
のではなくお客さまが何を求めお店に来て、
私たちはお客さまのために何からはじめれば
いいか。

そのようなコトを考えながら
商売を続けている千葉酒店には、
本当の商いができる学芸員がいる。
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千葉酒店
住所:〒319-2102 茨城県那珂市瓜連560
電話:0120-774-750

 

 2015年3月20日 発行
著 者 :宗形 朱梨(常磐大学コミュニティ文化学科)
写 真 :森作 勇哉(常磐大学コミュニティ文化学科)
デザイン  :宗形 朱梨(常磐大学コミュニティ文化学科)
監 修  :塚原 正彦 常磐大学教授
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