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瓜連まちの風土記 第44巻

瓜連まちの風土記 第44巻

人とシゴト

 

【蕎麦研究二八会】
オヤジの台所からみえる
食のこだわり博物館

 手間とひまをかけて男たちがつくる
 ホントウのおいしさから
 食の美に気づくことができる
44表紙
◆かつて瓜連はたばこの産地であった。次の年に質のよいたばこをたくさん栽培できるようにとの思いをこめ、その裏作としてどこの家庭でもソバが栽培されていた。ソバを刈り取り、製粉し、それを打ってゆでるのは、男の仕事であった。こだわりを追求する男の台所はハレの食で、毎日の暮らしのための女の台所とはちがう。ソバにこだわり、ソバを学び、ソバを糸口に人と人が結ばれた彼らの活動から未来の食のカタチ、家庭のカタチがみえてくる。地産地消、手づくり、研究会、商売ではない、手間をかけておいしいをお届けすることにこだわる男たちの物語にであうことができる。

そばが心から好きな男たちが集まる会が、
10年以上前に自然発生的に発足した。
つくって食べるということを主体に活動している
その会の名は、「蕎麦研究二八会」という。
会員は20名ほど。
「蕎麦研究二八会」のひとり、引田克治さんに
お話をうかがった。
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「ソバが栽培されていたのは、瓜連の土地柄
ゆえだったのだろうね」と引田さんはいう。
その昔、瓜連という土地はお米があまり収穫
できなかった。
その代わりにたばこが栽培され、その裏作
としてソバの栽培が行われていた。
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たばこを栽培した後、畑の土には豊富な
栄養が残っている。
ソバはその栄養をどんどん吸収して大きく
なっていく。
そうして育ったソバの実を収穫して、そばを
うち、茨城の郷土料理でもある「けんちんそば」
にして食べる活動からスタートした。
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「蕎麦研究二八会」は、月1回集まって、
みんなでそばをうつ。
できあがったそばとお酒を片手に
おしゃべりをする。
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「男の道楽だよ」と言って笑う引田さんも
自分でそばをうつという。
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プロが作るそばよりも美味しいものが
できあがるよ。
品質を一定に保たなきゃいけないプロと
違って、自分がうまいと思うそばをどう
やったら作れるのか。
うまいそばの材料をどうやったら手に入れ
られるか。とにかく、うまいということに
こだわってそこに全力投球しているのだから。
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商売を度外視し、ひたすらおいしいという
ことだけにこだわってできあがるそばは、
まぎれもなくホンモノであり、至高の一品
である。
いま彼らは、静峰ふるさと公園で開催される
「八重桜まつり」で振る舞うおいしいそばの
開発に全力を投入しているという。
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そばは年越しで食べられている縁起物の
食べ物である。
ソバが細く長いということに着目し、人々は
そばに、延命と長寿の願いをかけたのだろう。
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引田さんは、そばには、人と人をつなげる
という役割もあると思っている。
そうであるからこそ、引田さんは、そばを
活用しながら人々をつなげるプロジェクトに
可能性をみいだしてもいる。
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引田さんはこれから先、食が地域おこしの
ポイントになるとお話ししてくれた。
おいしい食べ物を求めて人々は行列をなす
ことが多い。
そこからリピーターになってくれる人が増える
ことで、ふるさとへの関心がうまれ、それが
地域おこしの起爆剤になればと考えている
ようだ。
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なるほど、地域おこしに食が関わることは
けっして少なくない。
郷土料理やB級グルメがメディアにとりあげ
られるケースも多い。
私の地元でもある那珂市でそういった食の
まちおこしができればうれしいと思う。
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しかも引田さんたち「蕎麦研究二八会」の
ようにプロではなく、地域住民の手づくりから
誕生したものであれば、それはさらにステキな
ものになると思う。
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「蕎麦研究二八会」の男たちが道楽で
はじめたこの活動が起爆剤になって、
そばをとおして那珂市に光をよびこむ、
物語が誕生する日が待ち遠しい。
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 2015年3月20日 発行
著 者 :大内 彩夏(常磐大学コミュニティ文化学科)
写 真 :森作 勇哉(常磐大学コミュニティ文化学科)
デザイン :宗形 朱梨(常磐大学コミュニティ文化学科)
監 修 :塚原 正彦 常磐大学教授
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