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額田まちの風土記 第10巻

額田まちの風土記 第10巻

額田の民話

 

ほっこり昔ばなし 額田10-表

江戸時代、
寛政年間(1788~1801)の頃、
額田に大谷達才という
とん知にたけたものがいたそうだ。
光圀山攝取院引接寺には
1802年に没した
大谷与一郎の墓があり、これが
「たっつぁい」の墓とされている。

額田10-3

江戸時代は、
佐竹小野崎への思いを口にしたり、
表立って抵抗したり、
皮肉を言うことさえできなかった。
そのため、額田では
それを風刺した民話がのこった。
水戸の殿様から愛馬をだまし取る話や
ウソ比べの中で、名だたる1本の竹
『佐竹』の話もあるほどである。
 

主人公の「たっつぁい」の
ふるさと額田で、陸前浜街道の支道の
宿場町額田の民話「たっつぁい」の
ちくばなし(ほらふき)は、
宿場町で働くものや旧水戸領の周辺の
村人らの世間話のひとつとして
語りつがれ、
現在も昔話として伝えられている。
 

久慈川に橋もなく渡し船があった。
その当時の額田村は人の往来も多く、
氾濫の時は川どまりとなり、
旅人は宿をとらねばならなかった。
それゆえ、額田の民話は
福島地方にもひろがりをみせ、
旅人の間で全国にひろまっていった。

額田10-7

出版されている絵本
「額田のたっつぁい」では、
ほらふき名人をあっと言わせる
幼少期の「たっつぁい」のほらふき話
からはじまり、いくつものお話の中で
「たっつぁい」が大人に成長していく
姿をみることができる。
 

短編でまとめられたお話を
いくつか読んでみると、
なるほどと感心させられたり、
笑わせてくれたり、
人の心をあたたかくしてくれるもの
ばかりだった。
その中のひとつを紹介する。
 

ねずみとり

昔むかしの百姓は、
冬にワラ仕事をしました。
若者たちは、みんなで集まって
ワラ仕事をしたもので、
そんなときのはなしです。

まだ若かったたっつぁいが、
「権兵衛(ごんべえ)の家には、
4つ足の鳥がいたぞ。
かごの中に入っていたぞ。」
と言うと、若者たちはむきになって、
「鳥は2本足だ。」と相手にしません。
「いいや、4本足の鳥だっているぞ。
賭けるか。」ということになり、
たっつぁいのあとから見に行きました。
すると、
鳥かごの中にねこが入っていました。
「このねこは、
にわとりを追っかけまわすから、
鳥かごの中に入れられたんだ。」
と誰かが言うと、たっつぁいは、
「いや、この鳥はねずみとりという
鳥だ。4本足の鳥だ。」
とすまして言いました。
また、たっつぁいにだまされました。

おわり

額田10-10

このような、
「たっつぁい」のほらふきは人々を
あっと言わせ、楽しませてくれる。
ときには知恵をはたらかせて、
村人たちに畑を耕させたり、
落ち込んでいる村人を
お得意のほらふきではげましたりと、
「たっつぁい」は思いやりの
心をもった立派な大人に成長する。

額田10-16

民話「たっつぁい」の
お話と出会うことで、
ほっこり幸せ気分になれるだろう。

額田10-19

 

 額田10-後

 2017年2月6日 初版第1刷発行
著 者 :畑岡 祐花
写 真 :畑岡 祐花
発行者 :日本地域資源学会
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