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額田まちの風土記 第17巻

額田まちの風土記 第17巻

木名瀬金物店

 

額田の底力をあしたに伝える博物館 額田17-表

額田のまちは、
昔から職人のまちであった。
かつて林業で盛えていた
久慈川の上流から材木が運ばれてくる
このまちでは、その材木を加工する
建具屋が軒を連ねていた。

額田17-3

額田では、
木を目利きすることができ、
木のチカラをいかし、自由自在に
カタチをつくることができる職人が
住みつき、その職人たちを支える
商いが盛んに行われた。
木名瀬金物店は、
額田に暮らしている職人たちを
支えてきた100年の歴史を持つ
道具屋である。

額田17-5

金づち、ペンチ、ドライバーなど、
ホームセンターでいつでも目にでき、
手に入れることができるはずの道具。
しかし、木名瀬金物店には、
見ただけではわからないが、
さわってみるとそのちがいが
わかる道具、ホームセンターでは
手に入れることができない道具が
ならべられている。

額田17-7

工事現場や工場内で重量物を
つりあげるためのアイフックは、
何種類もの大きさに分けられて
展示されている。

額田17-9

ひずみを取りのぞいたり、こて面を
均一に仕あげる油焼仕上鏝は、
ホームセンターでは、800円ほどで
手に入れることができる。
ところが、プロが使う
しなりのある鏝は4,000円もする。
1ミリの誤差にもこだわる職人は、
道具に投資するからプロ仕様を使う。

額田17-11

木名瀬金物店には、そういうプロの
職人のための道具、職人の技を
活かせる道具がそろえてある。
ここは職人のための
道具ミュージアムである。

額田17-13

個人の住宅も、
ハウスメーカーのそれが主流になり、
材木も輸入材が使われるようになった。
そういう時代の流れで、額田の
地場産業にまでなっていた
建具屋さんは、いまやほとんど
いなくなってしまった。
木名瀬金物屋さんは、そんな額田で、
この額田のまちの記憶を
いつまでも引き継いでいきたい。
そのような志を持って、
道具にこだわり、
道具屋さんを守り続けている。

額田17-15

そんな気骨のある木名瀬さんは、
額田の大工の名人、小田倉さんと
大の仲良しである。
道具を手にとってはじまる2人の
対話はいつまでもつきることはない。

額田17-17

職人が活躍し、木名瀬さんのように
職人を支える仕事がたくさんあった
額田のまちで、職人の手のチカラと
その技をもっと多くの人に知って
もらいたい、そして後世にのこしたい
という気持ちが結びついた。
木名瀬さんと小田倉さんが組んで、
手のチカラをいかし、職人ができる
最高のモノづくりをいかした理想の
住宅を、店舗の隣にたてることにした。

額田17-19

木名瀬さんがオーナー、
小田倉さんがデザイナーと大工の
役割をして、できあがったこの家は、
木名瀬家の幸せを育む住宅である。
それと同時に額田のまちを
つくってきた職人たちの
生きるチカラとその技を展示する
「みんなのミュージアム」である。

額田17-21

ミュージアムを見てもらう
木名瀬さんの笑顔が印象的であった。
このミュージアムをつくりあげるまでの
こだわりを語る小田倉さんがそろうと、
話が止まらなくなる。

額田17-23

「あんちゃん、
これも撮っておいてくれ。」
2人が指さす先には、階段から玄関まで
つながる白い大きな長方形の石畳が
しきつめられていた。
「これを作るのに2年もかかっでんだ。」
その表情は、苦労を語る顔ではなく、
素晴らしい笑顔だった。

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職人の技が見れ、職人の思いにふれ、
その生き様を見つけることができる
ステキなミュージアムが
額田のまちにある。

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 2017年2月20日 初版第1刷発行
取 材 :久野 明日輝
著 者 :久野 明日輝
写 真 :久野 明日輝
編 集 :畑岡 祐花
発行者 :日本地域資源学会
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