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額田まちの風土記 第21巻

額田まちの風土記 第21巻

つぼ焼おおがね

 

伝統と真心の人情ミュージアム 額田21-表

交通量の多い道路にそって
私たちを待っていたのは
物静かな雰囲気の建物と
店の存在を主張する
「つぼ焼」の看板であった。

額田21-3

この場所が伝統に根ざした技と真心を
こめて、お菓子づくりを続けている
「つぼ焼 おおがね」。
長く親しむことができる「味」の
発見ができるお菓子屋さんだ。

額田21-5

お菓子、それは
日常を彩ることのできるもの。
お菓子、それは
つくり手の思いがつまった宝物。
「つぼ焼 おおがね」は私たちの日常に
小さな幸せをもたらしてくれる菓子を
つくり続けている。

額田21-7

店内はとても落ち着きがある。
たくさんのお菓子が
ならべられている。
おせんべいや
色とりどりの金平糖もある。
ガラスケースの中には看板商品
「つぼ焼」などの
生菓子がならべられている。
なじみのあるお菓子から
はじめて見るお菓子まで
店内のたくさんのお菓子をみて
私は胸をおどらせた。

額田21-9

「つぼ焼 おおがね」のお菓子は
4代目のご主人
大兼一順さんがつくっている。
記録があるわけではないが
創業して100年以上になるらしい。

額田21-11

100年を超えた歳月を
額田のまちとともに生きてきた。
もともとはいまお店がある場所よりも
少しはなれたところに
店をかまえていた。
火事にあってしまったために
店をこちらに移動したという。
いまは
「つぼ焼」が看板商品であるが、
昔は
「酒まんじゅう」を
それにしていたという。

額田21-13

看板商品が
それまで長く愛されてきた
「酒まんじゅう」から
「つぼ焼」に変わってしまった
ことについて聞いてみた。

額田21-15

いまから45年前に
何か個性のあるものが必要と思い
先代がつぼ焼をつくってみた。
それで人気になったらしい。
 

創業以来ずっと愛されてきた
お菓子を守るだけではない。
つねに新しい商品を生みだそうという
意欲を持ち続けているという。
お客さんの気持ちにこたえるために
感謝の思いを込めるために
改良に改良を重ねて新しい商品を
うみだしたいと考えている。
 

「つぼ焼」も進化して
いまでは3種類ほどになった。
種類が増えるたびに
「芋うと(妹)ができたよ」といって
お客さんに知らせるらしい。
ご主人のことばに
私の心もあたたかくなった。

額田21-19

店の中に伝統を感じさせる
美しい箱を見つけた。
箱の中身は空っぽである。

額田21-21

箱屋さんにお願いして
つくってもらった特別な箱で
お店のお菓子をいれて
お客さんに渡すらしい。

額田21-23

美しい和紙でできた箱は
とてもはなやかで外国人への
おみやげにも人気だという。
その美しさには
日本人である私たちでさえ
もらったら感動するにちがいない。

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ご主人にお菓子をつくるうえでの
思いを聞いてみた。
意外な答えが返ってきた。
「創っているときに思いはない。」

額田21-27

お菓子は繊細で手元がくるえば
味も形も変わってしまうから
いつも集中しているという。
集中してお菓子と向きあうだけで
身体にしみこんだ
たくさんのあたたかい思いが
指先からお菓子へこめられていく。
 

ご主人は
「いつも喜ばれるものを創りたい。」
と笑顔で語ってくれた。
 

いまでは息子さんである5代目と
お孫さんである6代目が
修行中だそうである。
次の世代でつぼ焼にかわる看板商品が
誕生することを期待している
と秘めた思いを話してくれた。
 
静かであたたかみのあるお店
はなやかな和紙でできた美しい箱
やさしく寄りそう
たくさんのお菓子たち
それらにはすべて
ご主人と奥さんの
思いがこめられていた。
それらの宝物たちが
たくさんの人に笑顔をとどけている。
「つぼ焼 おおがね」は
伝統と真心がつまった
人情あふれるミュージアムであった。
 

 

額田21-後 

 2017年2月13日 初版第1刷発行
取 材 :林 優希、川崎 憲吾、佐川 愛理奈
著 者 :堀内 瑠那
写 真 :林 優希、川崎 憲吾、佐川 愛理奈
編 集 :畑岡 祐花
発行者 :日本地域資源学会
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