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額田まちの風土記 第29巻

額田まちの風土記 第29巻

サタディースクール

 

子どもたちの夢を応援する
未来のためのミュージアム
額田29-表

ここは茨城県那珂市額田である。
どこにでもある田舎な風景が
ひろがる場所である。
だが、そこには、額田にしかない
ふるさとの子どもたちを支える
絆があった。

額田29-3

額田の子どもを守り、
支える会がある。
会長の成田さんを中心に
土曜日に開かれる
サタデースクールは、
額田のまちすべてを
学びの場にしている。
 

ここには教室も
決まった先生もいない。
地域全体が教室、教科書である。
地域のおじいさんや
おばあさんが先生になる。
中学生も先生になる。
 

サタデースクールの活動のひとつに
「フラワータウンインぬかだ」
というプログラムがある。
そのコンセプトは、まちを花でかざり
行きかう人の心にも花を咲かせよう。

額田29-9
街にある花だんに花を植えるだけの
1回きりの活動とはひと味ちがう
額田の人々が力をあわせて、
花だんから手づくりしてしまう。

額田29-11

大人たちは、
コンクリートを汗水たらしてくだき、
花だんをつくる。
子どもたちは花だんに植える花々を
いっしょうけんめいに水をあげて
種から育てる。

額田29-13

その花だんをつくりあげる活動は、
まわりの人の心も動かした。
やがてサタデースクールという
かきねを飛びこえて近所の人や
学校をもまき込んだ活動に
発展していった。

額田29-15

夏の暑さに
花がやられていないか心配で、
その様子を見に来た子どもたち、
そんな子どもたちを悲しませまいと
近所の人がすすんで花だんに
水をあげるようになった。

額田29-17

そんな地域と子どもたちを
つなげる活動を
額田の子どもを守り支える会では
1年を通して行っている。

額田29-19

「地域で子どもを育てる」
いまの日本で失われつつある考えだ。
それを完全に失ってしまったら、
その地域の大切な宝物が
失われてしまうような気がする。

額田29-21

会長の成田さんは、
その宝物を守り続けようと、
地域が持っているチカラを生かして、
子どもも大人もそして自分から
学び楽しめる企画を次々に考えだす。

額田29-23

たとえば、
100円ショップで買えるようなモノと
空箱のみを使ってつくった道具で行う
手づくりスポーツがそれである。
限られた場所や道具で
どんな遊びができるか
それを考えるところから
プログラムづくりがスタートする。
成田さんは、自分で考えた遊びを
地域の大人や保護者と楽しむ。

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道具も材料も限られているが、
そういう体験から得られる感動は、
お店では買えない。

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そんな人と人との
かかわりでしか得られない体験を
このサタデースクールをとおして
子どもたちだけではなく
地域の人々にも与えている。

額田29-29

子どもにしか見えない世界、
大人になってからわかること、
それらを額田の人々は共有できる。
 

額田を歩いた際、
おじいさんと遊ぶ男の子や
おばあさんと散歩をする姉妹に
会うことができた。
核家族化がすすんでいる現代では
なかなか見ることができない
光景である。
そんな世代を超えたつながり。
そのつながりを育む
手助けをしているのが
額田のサタデースクールである。
最近は地域の人と
関わることも少なくなり、
家族との時間も減ってきている。
そんな失われつつある時間を
取り戻せるのが、ここ額田であった。
 

 

 

 2017年2月13日 初版第1刷発行
取 材 :竹内 千聡、阿部 未波
著 者 :竹内 千聡、阿部 未波
写 真 :竹内 千聡、阿部 未波
編 集 :畑岡 祐花
発行者 :日本地域資源学会
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