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瓜連まちの風土記 第11巻

瓜連まちの風土記 第11巻

らぽーると瓜連小学校

 

【瓜連小学校木造校舎】
未来からの文化遺産

 ホンモノの出あいと感動が未来を育む
11表紙
◆瓜連では、まちの経済を支える基幹産業が乏しかった。農産物の産地形成もされることはなかった。
◆そんな小さなまちを守るために、いつの時代も、まちは人づくりに情熱をかたむけてきた。
◆そのような先人の教えを継承するため、瓜連の大人たちが、無垢の材木と漆喰壁の本物の自然素材で、アートや体験の学習にも
柔軟に対応できる子どもたちの理想の学びの場として、木造校舎を準備した。

青々とした芝生がひろがる校庭の先に、
赤い三角屋根と白壁のステキな木造の
建物がみえます。
瓜連の文化ホールではないかと思い、
表札に刻みこまれた文字をみて、
驚きました。そこには、
瓜連小学校と書かれてあります。
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私は学校というとどうしても
鉄筋コンクリートで囲まれた四角い建物と
白線でトラックが描かれた運動場を
イメージします。

そんな私の予想を裏ぎったこの小学校は、
校舎が視界にはいってきただけで、
不思議に、わくわくする気持ちを
感じさせてくれます。
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ミュージアムやライブラリーを勉強している
私たちは、すべてのきっかけは、感動との
出あいからはじまるということを学びました。
そこに行ってみたいという気持ちを
起こさせるコトから学びはスタートします。
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そうであるからこそ、
大英博物館やルーブル美術館、
アレキサンドリア図書館など人類の歴史に
とって大きな役割を果たしてきた
ミュージアムやライブラリーは、
感動づくりに時間と手間をかけて
つくられています。
 

いま私が遠くからみている瓜連小学校は、
そういう施設と同じように私たちの心を
ワクワクドキドキさせる何かを感じることが
できます。
それでは、いまから、瓜連小学校の
木造校舎に入ってみることにしましょう。

板張りの廊下に、窓から日の光が差し込んで
います。まぶしく照らされている廊下の突き
あたりには、二つの逆三角形の小窓が
見えます。よく見ると、逆三角形の小窓が
いたるところに散りばめられ、木造校舎の
素敵なアクセントになっています。おそらく、
光を取り入れやすくしていると思います。
天井に近いところにこの窓がたくさん
もうけられています。
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廊下の突き当たりの左側には、図書室が
ありました。図書室の窓は全面ガラス張りで、
とっても明るい空間になっています。そして、
皆で円くなって座って本が読めるスペースが
設置されています。地下に向かってまるく
切り抜いたようなカタチで、円形の二段
ベンチのようになっています。
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保護者や地域社会の人々が来て、
読み聞かせをしたり、高学年の図書委員が
低学年の子どもたちのために、
読み聞かせ会をしたりするには
最高の空間になっています。
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私の頭の中には、
円の上段で図書委員の子どもたちが
本を開き、円の中で輪になって
その話に聴きいる低学年の子どもたちの
姿が鮮明にうかびあがってきました。
 

さあ、もう少し進んでみましょう。
これはホールなのかしら?
仕切りがないひろいスペースにはピアノが
置かれています。そして、天井は吹き抜けに
なっています。
まるい大きなライトが三つずつ連なって
下がっています。
まるで高原のホテルのようです。
そして、窓の外には、緑が気持ちいい
芝生の校庭が見えます。

階段を上ってみると、
ひろい、ひろい廊下があって、
上の階の廊下からもこのホールが
見降ろせます。
なんて素敵なんでしょう。
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音楽室に入ってみます。
段差があまり大きくなく、自然な感じで
四段になっています。一番下の段の中心に
グランドピアノが置かれ、全面には
五線譜付きの大きな黒板もあります。
ここは、みんなで楽しく、最高の合唱が
できるようにつくられているのです。
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倭文織クラブの活動の部屋もあります。
木製の機織機が置かれています。
しっくいの壁と杉の柱と床板にじつに
よくマッチしています。
この部屋で月二回、子どもたちが
地域の皆さんに教えていただきながら、
瓜連の昔の織物を織っています。
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カラフルな木組みの手摺が目につき、
思わずベランダに出てみました。
なんて美しいんでしょう。
同時に、その向こうの一面の緑が
目に飛び込んできます。
ひろい芝生の校庭です。
都会ではとても考えられない
豊かな場所です。
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教室の木の机と椅子は、児童が六年間
卒業するまで使えるように、体が大きく
なるに従ってどんどんサイズを変えられる
ようになっています。
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最後に、校舎から続く体育館へ。大きな八
角形の屋根が特徴です。てっぺんから光が
差し込み、明るく気持ちのいい空間です。
バスケットコートが何面もとれる大きな体育館
です。音楽ホールの様でもあります。
ここでは、地域の皆さんと季節の行事で交流も
します。最近では書き初め会、節分では豆まき
もしました。ひろいからこそ伸び伸びできます。
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地域社会のあしたを育む学校を、
子どもたちの感動を育むという視点から
デザインした瓜連小学校の木造校舎は、
私たちに未来の学校の姿を見せてくれる
ステキな宝物です。
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瓜連小学校木造校舎
平成四年(1992年)5月、今から23年前に完成しました。
私たちの未来を託す子どもの生活・学習の場である学校が彼らにとって一生の宝物となる
ような体験がうまれる建物にしたい…というまちの人々の思いをカタチにしたものです。

 

 2015年3月20日 発行
著 者 :清水 るりこ(日本地域資源学会)
写 真 :森作 勇哉(常磐大学コミュニティ文化学科)
デザイン :宗形 朱梨(常磐大学コミュニティ文化学科)
監 修 :塚原 正彦 常磐大学教授
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