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瓜連まちの風土記 第10巻

瓜連まちの風土記 第10巻

らぽーると瓜連小学校

 

【瓜連小学校の通学路】
あしたへつながる道

 子どもの笑顔と元気を応援する
10表紙
◆車道と同じくらいの幅があり、誰もが安全を確認しやすいひらけた道に整備されている。
◆生活者によって飾られた季節の草花やお庭の飾りが、毎日子どもたちを出迎え、そして見送ってきた。
◆この道を歩いていると、瓜連の元気な子どもたちと幸せの秘密に出あうことができる。

今日、私は瓜連で
まちにあふれる幸せをひろって歩いた。
話に聞いていたとおり
瓜連は何もないまちだった。
コンビニ以外に何も見あたらない。
背の高い建物は学校くらいで
ただひたすらどこまでも
畑がひろがっている。
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でも、その何もないところで
私は幸せをたくさんひろうことができた。
立派な校舎と校庭を持つ瓜連小学校。
そこに通う子どもたちが毎日歩く通学路は
車道よりもひろい
これには驚かされた。
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とにかく歩きやすく、そしてかわいらしい
花たちがところどころを彩っている。
通学路のまわりには、きれいな庭を持つ
家が立ち並び、瓜連の未来を担う子ども
たちをやさしく見守っている。
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小学校のとなりに文具店がある。
50年前、火事にあって移転した小学校と
いっしょにとなりへ引っ越して来たという。
つい最近までその文具店を営んでいた
女性と、お話することができた。
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たくさんの子どもたちを喜ばせてきた
彼女はいま、ボランティアで毎日
近所の草むしりをして歩いているという。
こんな風に笑顔で気さくに
話しかけてくれる人がいるだけで
うれしくなる。
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小学校の前を流れている瓜連の用水に
すみついている魚をながめていると、
女の子たちが「こんにちは~!」と
後ろから元気よくあいさつしてくれた。
「この用水路にふざけて落ちてしまった
子が何人いるんだろう?」などと
くだらないことを考えていた私は、
びっくりして足をとられそうになった。
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最近では学校で「知らない人には声を
かけるな」と習うという。そんな中、明らかに
よそ者である私に明るく声を掛けてくれる
子どもたちがいる。声をかけあい、地域で
助けあいながら生活している瓜連の人々が
彼らを大切に育んでいるということが
まざまざと実感できた。
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毎朝、人と肩をぶつけあいながら
改札を通り抜ける生活をしていては
こんな温かさは感じられない。
このごろ、目的地に着くことだけを考えて、
早歩きになっていた。
ゆっくりまちを歩いたり
気になるところへ寄り道したり
そういうことをすっかり忘れていた。
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ふと目を向けたその先に電柱があった。
その下に視線をうつすと
コンクリートに
犬の足跡が刻み込まれている。

多分、固まらないうちに
犬が踏んでしまったのだろう。
瓜連の人々のひろい心に
幸せを感じた。

玄関先に、ひょうたんの実が生っている
家をみつけることができた。
生っているひょうたんをみたのは
はじめてだったから、ちょっと感動した。
瓜連の子どもたちは、きっと毎日
こんな風に楽しい発見をしながら
この道を歩いているのだと思うと
ほんとうにうらやましい。
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瓜連を歩き、その空気や人にふれて
心にゆとりがうまれた。
小さな発見の数々で、私は幸せのヒントを
みつけることができ、元気になった。
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訪れたときと帰るときとでは、
瓜連の印象はまったくちがっていた。
行きと帰りは同じ道だったはずなのに、
景色がガラっと変わって、
いろいろなものが輝いて見えた。
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この地にあふれている数々の宝物や
温かい人々のことを思い、
今日ひろった幸せを思いながら、
私は瓜連を後にした。
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 2015年3月20日 発行
著 者 :清水 るりこ(日本地域資源学会)/藤沼 友香(常磐大学コミュニティ文化学科)
写 真 :森作 勇哉(常磐大学コミュニティ文化学科)
デザイン :宗形 朱梨(常磐大学コミュニティ文化学科)
監 修 :塚原 正彦 常磐大学教授
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