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瓜連まちの風土記 第14巻

瓜連まちの風土記 第14巻

らぽーると瓜連小学校

 

【瓜連おはやし保存会】
ふるさとの音と舞いを
あしたへ結ぶ人づくり

 お祭りにうめ込まれた学びの仕組みをいかして、
 まちを元気にするためにたちあがった人々の
 ドラマから瓜連のあしたがみえる
14表紙
◆ハレの日を演出するためにふるさとのすべての人をまきこむ祭りには、ふるさとで生きるための知恵や段取りを磨き、それを育む人づくりの
仕組みがうめこまれている。
◆瓜連の鎮守の森、素鵞神社のお祭りに欠かせないおはやしにもそれがいきていた。
◆夏のお祭りは、瓜連のまちの衰退とともに失われてしまったが、かつて瓜連のまちの人々を魅了し熱狂させた音と舞い、それを受け継いだ
仕組みを遺(のこ)せば、いつかお祭りは復活できる。
◆あしたのふるさとを担う人づくりに情熱をささげる人々が集い、それがカタチになった。

「瓜連のおはやし」は、素鵞神社の氏子たち
により受け継がれてきたものであった。
ところが、生活スタイルが変わり、核家族化が
すすむとともに、お祭りを担う人も「おはやし」
を継承する人も、次々に減ってしまい、お祭り
そのものも維持できなくなってしまった。
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その流れをどこかで止めなければと考えた
ふるさとの人々が結集して、昭和58年
(1983年)「瓜連おはやし保存会」が
結成された。
保存会が誕生した当時は、瓜連町内の
小中学生やその親たちなど約100人が
会員として参加し、活動していた。
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ところが、小中学生の生活スタイルも多様化
して地域社会とのかかわりが少なくなって
しまった。学校を卒業すると同時に、親と
一緒に会をやめてしまうようになり、会員が
5人にまで減ってしまった。
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伝統を守ることへの熱い思いや古いやり方に
とらわれていてはやっていけない。人々の
生活価値の多様化に対応し、生き残っていく
道を探さなければならない。
そう考えた彼らは、瓜連町内で生活している
人に限っていた会員の条件を改めた。そして、
「おはやし」に興味がある人なら誰でも歓迎し、
練習できるようにした。
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子どもたちが楽しめる新しい曲にも積極的に
挑戦した。瓜連小学校のクラブ活動に参加し、
月二回の太鼓教室を開講した。
そういう改革が結実し、参加している子ども
たちからは、「もっとやりたい!」との声が
寄せられるようになった。
子どもたちは、毎週水曜日の夕方に
「総合センターらぽーる多目的ホール」で練習
に参加するようになり、皆が熱中しはじめた。
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会長の川上さんによると、伝統をつなぐという
使命が先にあるのではなく、教える方も教え
られる方も、互いに楽しんで成長する。
その結果として、伝統をつないでいく。
それが瓜連流の「おはやし保存」のやり方
だという。
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そしてそれは、子どもたちから楽しんでやる
ことの大切さを教えられ、試行錯誤しながら
そういうスタイルができあがってきたものだと
いう。
そんな子どもたちにいま最も人気があるのは、
会の副会長を担っている木内さんが作曲した
「氏子囃子」である。
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川上さんは奥さんから、

「そんなお金にもならないことして、
遊んでばかり」

とグチをこぼされるそうだが、お金よりももっと
楽しいよろこびに共感した人々が集い続けて
きた活動は、これもまた瓜連というまちの
誇りになると私は思う。
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会員みんなの努力のおかげで、いま会員は
町内外から集まり、だんだん増えてきている
という。
那珂市民ではない私たちも活動を見学させて
いただく貴重な機会を得ることができた。
幅ひろい年代の方たち皆がイキイキと楽しく、
「おはやし」に熱中していた姿を目の当たりに
した私たちは、その居心地の良さに感銘を
受けた。
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太鼓をたたく音は
お腹の中にまで響いてきた。
そしてたいへん心地が良かった。
ずっと聞きいっていた私たちに、

「一緒にやろう!」

という声をかけていただいた。
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子どもに教えることに手慣れているようで、
まったくの初心者である私たちも、簡単な曲を
楽しく覚えることができた。
熟練した教えのおかげで、会員の皆さんと
太鼓をたたくことができた。からだを思い切り
使って音をだすその体験はじつに爽快で
あった。私たちは、会の一員になったような
気分になった。
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いま会は毎年、静峰ふるさと公園で開催される
「八重桜まつり」や「なかひまわりフェスティバル」
などに出演するのを目標に技を磨いている。
昨年は、那珂市と姉妹都市になっている秋田県
横手市で開催された国民文化祭でも練習の
成果を披露している。
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みんなで楽しく学び、人を育みながら伝統を
残そうと活動するその仕組みは、確実に次の
世代に継承されていくと思う。
瓜連おはやし保存会の学びのスタイルは、
新しい歴史と伝統を継承するヒントとなるもので、
瓜連の宝物である。
その活動は、これから先もまちを元気にする
ことに貢献する成果をあげると思う。
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 瓜連おはやし保存会
 代表:川上 正廣
らぽーる多目的ホールで毎週水曜午後7時~9時に活動

 

 2015年3月20日 発行
著 者 :畑岡 祐花(常磐大学コミュニティ文化学科)
写 真 :森作 勇哉(常磐大学コミュニティ文化学科)
デザイン :宗形 朱梨(常磐大学コミュニティ文化学科)
監 修 :塚原 正彦 常磐大学教授
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