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瓜連まちの風土記 第1巻

瓜連まちの風土記 第1巻

瓜連のまちと常福寺

 

【瓜連駅】
まちの暮らしがみえる博物館
 

 駅を守る人、使う人、
 人がいきかう駅の風景から
 まちの暮らしが見える
 01表紙
◆瓜連駅は、学生やお年寄りがよそのまちに出かけるために使う小さな駅である。
◆瓜連から外へ旅立った人も外から瓜連のまちへ帰ってくる人もこの駅を使うから、物語がうまれる場でもある。
◆無味乾燥な近代的な駅に改装されてはいるが、人をおくり、迎えるたたずまいはいまでも生き続けている。
◆ここにいるだけで、ふるさとを舞台にした人々の夢や物語に出あうことができ、生きるカタチにふれることができる。

 


水戸から郡山へ続く水郡線
自然に囲まれた単線を行くと
人々の生活が息づいた
風景がひろがっている。

畑で働く人
線路沿いを散歩している人
瓦屋根が集まる集落
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そこには
多くの日本人が恋いこがれる
「ふるさとの姿」がある。

そんな水郡線の駅のひとつ
小さな瓜連駅には
どのようなドラマがあるのだろう。
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水戸駅から八駅、
三十分ほどで瓜連駅に到着する。

二〇〇七年に新たに建てられた駅舎は
簡易ながらもとてもキレイなつくりだ。
人々が暮らす家々がたくさん並び
小学校や市民が集まる「らぽーる」
そして、スーパーもある。
01-07
 
電車が来るまであと二十分ある。
ホームには私たちがいるだけだ。

春が近づく三月の暖かい日差しの中、
ホームのベンチに座って
ぼんやり待っていた。

線路越しの道を中学生が自転車で駆け抜け、
その脇を車が通り過ぎていく。
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ここに座ってあたりを見ていると
瓜連の人々の暮らしぶりがうかがえる。

電車が来る時間まで、一〇分を切る。
すると、しだいに人々が集まってきた。
一人、二人、三人と、どんどん増えてゆく。
すると、おじいさんおばあさん、
それから高校生くらいの少女まで
幅広い年代の人が電車を待っている。 
01-11

やがて電車が来るころには
この小さな駅に
十人以上の人が集まっていた。
電車の本数がそれほど多くないからだろう
瓜連駅を利用する人々は
電車が来る時間を見計らって
駅にやってきている。
みんなが、電車の時間を基準に
行動している。
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利用する人々は生活の一部として
瓜連駅に、そして水郡線に
寄り添って生きているにちがいない。

年齢も性別も服装も
バラバラな人々が集まる
このホームでは
一人一人それぞれの
物語が見えてくる。
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小さな手荷物を持ったこのおじいさんは
これからどこかへお邪魔するのだろうか。

エコバックを持ったこのおばあさんは
買い物へ行くのだろうか。

おめかしをしたこの少女は
街まで遊びに行くのだろうか。
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瓜連駅周辺は、何でもそろう便利なまち
というわけではない。

大きなショッピングセンターもなければ
有名なチェーン店のお店も車を使わなければ
たどり着けないような距離にある。

だからこそ水郡線のような交通機関とは、
切っても切れない深い縁があるのだ。
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車の普及が目まぐるしいいまの時代でも
子どもからお年寄りまで、誰もが気軽に
利用できる鉄道は重要である。
どこかへ旅に出たいとき
遠くの友人に会いに行くとき
水郡線沿いの友人に会いにいくとき
そういうときに鉄道はいつでも、いつもと
ちがう新しい環境へ私たちを運んでくれる。
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駅には、私たちのような他所からやって
きた人を迎える、玄関口の役割もある。

友達、親子、お店の人、人を運ぶ鉄道と駅は、
人と人を繋ぐ、架け橋のような存在である。
そして、瓜連駅もまた時を超え人々を送り、
迎え入れてきたのだと思う。
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瓜連で生活する人々の多くは、瓜連駅から
旅に出て、瓜連駅が旅人を出迎えてきた。

人によって長い旅もあれば、短い旅もある。
一世一代の勝負をかけた旅もあれば、
気軽な旅もある。

それぞれの異なる旅ではあるが、
一つ一つに出会いがあり、物語がある。
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旅には、瓜連というひとつのまちにいるだけでは
味わえない新しい発見がある。
旅をきっかけにして育まれた知恵や感動が
結びつけば、人と人が結ばれ、
まちは限りなく成長していくことになる。
いつでもやさしいまなざしで、
人を見送り、人を迎えている瓜連駅は、
今日も瓜連の夢を育んでいる。
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瓜連駅とは
茨城県那珂市瓜連にある東日本旅客鉄道(JR東日本)水郡線の駅である。
一九一八年(大正七年)に、水戸鉄道の駅として開業。当時は終着駅であった。
1983年(昭和58年)に無人化され、2000年に橋上化される。

 

 2015年3月20日 発行
著 者 :宗形 朱梨(常磐大学コミュニティ文化学科)
写 真 :森作 勇哉(常磐大学コミュニティ文化学科)
デザイン  :宗形 朱梨(常磐大学コミュニティ文化学科)
監 修  :塚原 正彦 常磐大学教授

 

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