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瓜連まちの風土記 第32巻

瓜連まちの風土記 第32巻

静神社と静駅

 

【桂木稲荷神社】
幸せを招く景観と
しつらえの博物館

 幸せを招くために人々がつくりあげた物語と
 カタチからデザインのはじまりがみえる
32表紙
◆桂木稲荷神社は、広いソバ畑の中にあるムクノキの巨木を祀(まつ)った小さな神社である。
◆海と一体となっている厳島神社を思わせるかのような景観が人々を魅了し、大切に守られてきた。
◆どこにでもあり、その存在をすっかり忘れてしまうような小さな神社であるが、瓜連の空と大地を背景に、周囲の畑と一体になり、きらきら輝いている。
◆まわりのしっかりと整備された畑と神社をシンクロさせながら鑑賞してみれば、暮らしのアーティストの物語にふれることができる。

広大な畑に囲まれた大地に
二本の巨木がそびえたっている。

その光景を目にすれば
誰もが想像力を動かすことができる

ここに神々が降りてきて
幸せをふり注ぐと。
32-03

地平線を背景に
まっすぐたっているこの大木は
ムクの木である。

このムクの木は
昭和14年(1939)年、茨城県の
県指定文化財に指定されている。
32-05

推定樹齢800年
樹高約30メートル
幹のまわりは約8メートルといわれる。

大きなムクの木には
ふるさとの人々に代々受け継がれてきた
物語がある。
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寛司元(1087)年に源義家が
奥州征伐の途中
倭文の里に軍を休めるために
立ち寄ったという。
必勝を祈願したとき
持参した鞭(ムチ)をさしたまま
出陣してしまった。
そして、その鞭(ムチ)が根づいて
ムクの大木になったという。
32-09

そんな伝説を信じて
ふるさとの人々は
この大木を大切に守ってきたのだろう。

大木の脇には
五穀豊穣のシンボルである
稲荷神社がたたずんでいる。
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このムクの木をお守りするように
祠が置かれている。

ムクの木の幹は
腐朽し中が空洞になっているものの
それでも強くそびえ立ち
神々を迎えている。
32-13

ムクの木の手前に置かれた
小さな社の扉に近づいてみる。
隙間から中をのぞいてみると
二匹のお稲荷様の像と
七福神様の像が置かれていた。
地域の人々がきちんと清掃して
手いれをしているのだろう。
32-15

広大な畑にぽつんと立っている
ムクの木と小さな稲荷神社には
決まった宮司がいるわけでもない。
大きな神社がやっているような
仕組みなどがあるわけでもない。
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源義家の伝説があるから
神様が舞い降りてきて幸せの種をまくから
そのような物語に共感したふるさとの人々が
知恵とチカラをだしあって守り
受け継いできたのだと思う。
 

そしてそのような思いが
景観を守り
こんなステキな風景を
つくりあげたのだろう。
そう考えると
この景観を守り続けてきた
ふるさとのチカラに感動を
感じることができた。
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はるか彼方まで続く大空と
大地がまじわる景観を背にして
空高くそびえるムクの木を鑑賞してみよう。

きっと、
神々がまいおりてきて
幸せをふりまいている
その感動を実感できるから。
32-23

 

 

 2015年3月20日 発行
著 者 :江田 貴弥(常磐大学コミュニティ文化学科)
写 真 :森作 勇哉(常磐大学コミュニティ文化学科)
監 修 :塚原 正彦 常磐大学教授
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