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瓜連まちの風土記 第33巻

瓜連まちの風土記 第33巻

静神社と静駅

 

【花の寺 弘願寺】
草花の哲学ミュージアム

 草花のうつろいから生きるカタチがみえる
33表紙
◆帝青山弘願寺(ていせいざんこうがんじ)といい、臨済宗円覚派の寺院で1362年~67年の間に創設されたといわれている。
◆お寺を地域社会に開くため、花で人をもてなす。それに気づいた住職さんの思いがつくった庭園である。
◆ステキな草花にいろどられた庭園をながめていると、誰もが暮らしのリズムをとり戻すことができ、ふるさとがなつかしく思えてくる。そしてさらに住職さんとお話をすれば、生きるヒントを得ることができる。

弘願寺は帝青山弘願寺(ていせいざん
こうがんじ)という。帝青山とは、現在の
静神社がある小さな丘のことである。

そして、その場所は、昔も今も時を超えて
瓜連のシンボルであり続けている。
33-03

静神社に付属する寺院であった弘願寺は、
徳川光圀の命令で、1668年に、いまの
場所に移された。

弘願寺は、文政6(1823)年に火災にあい、
そして、天保年間(1830~44)に廃寺に
されてしまう。
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時の権力に奔放され、逆境にあったけれども、
それを乗り切り、復活して、いまも存続している
希有なお寺である。
弘願寺は、ふるさとの人に愛され、支えられ
ながら生き続けていく道を選ぶことで逆境を
跳ね返すことができた。
弘願寺には、地域社会とお寺がともに生きて
いくための知恵と仕組みが埋め込まれている。
その秘密を解き明かしてみよう。
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弘願寺を歩いてみる。訪れるすべての人の
感動を育み、人をプロジェクトに誘う働きかけ
が仕掛けられている。
はじめに、門前で雄々とした姿をみせてくれる
仁王像に迎えられる。
参道をしばらくすすむと、聴だけ観音や弁財天
といった観音像に出あう。
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西側につながる小さな道と結ばれている
薬師堂をひとまわりする。
たどりついたその先には、病気や怪我の
治癒をするくすぐり地蔵がいる。
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庭には、季節の山野草が植え込まれ、
いつ訪れても、人を楽しませる。

あらゆる知恵をはたらかせ、いまできる
範囲の中で、小さな寺と庭の中に、
この世とあの世の世界観が表現されている。
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この寺を訪れるあらゆる人が、心を動かし、
生きとし生けるものに感謝し、あしたに夢を
抱くためのヒントを探すことができるように
デザインされている。
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かつて寺子屋ということばがあった。なぜなら、
神社やお寺は、その土地の人々にとって
学びと交流の場であったからである。そこは、
普段着のままで人々が集まり、モノや情報を
持ち寄り、わかちあう交流の場であったから
である。神社やお寺は、人々の悩みを解決
するためのヒントをみつけることができる場で、
あしたのための夢や希望を探すことができる
場である必要があったからである。
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あの世とこの世を結び、生きとしいける
ものに感謝したり、みんながわかちあったり、
そういう感動を育む機会があってはじめて
信仰心が育まれる。
そのような信仰心があるからこそ、お葬式
という儀式がとり行われ、人と人が結ばれる。
そして、ふるさとは幸せになる。
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いまに生きる私たちの社会では、お葬式という
シゴトができてしまった。そこでは、お寺は
お葬式以外に縁のない遠い存在になって
しまった。
お寺がシゴトに徹してしまえば、それはそれで
やっていけるかもしれない。しかし、肝心の
信仰心を育むことがなければ、お葬式という
シゴトもやがては捨て去られていくことに
なるだろう。
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かつてお寺が持っていたホントウの役割が
見失われてしまいそうないまだからこそ、
できる範囲で精一杯、小さなミュージアムを
デザインし、それを実践している弘願寺には
感心させられる。
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偶然にも住職さんとお話をする機会を
いただいた。
お寺はすべての人に開いていくようにしたい。
普段着で、ちょっとした暇つぶしに遊びにきて
もらい、そして、何かに気づいて欲しい。
そのような願いを持って、毎日、草花を手入れ
し、清掃をしていると教えていただいた。
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住職さんとお話をしていると不思議に、「感謝
の心」や「おかげさまの心」といったことの
価値を再発見することができる。
それは、私たちが、いま普段の生活の中で
すっかり忘れてしまった価値であった。
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花を見にちょっと立ち寄るのもいい。
くすぐり地蔵に病気の治癒を願うのもいい。
住職さんのお話を聞きに行くのもいい。
いろいろな楽しみ方がある弘願寺は、
普段着のままで遊びに行けて、生きるチカラに
気づくことができる寺である。
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弘願寺 くすぐり地蔵 願いがつくった芸術作品

すりへったお地蔵さんの装いから祈りとありがとうの気持ちがみえてくる

病んでいる体の部位の地蔵の体をくすぐると身代わりになり治癒するといわれている。みんなの願いですっかりすり減ってしまい原型を失った像を元気にするために、人々は衣類を持ち寄り、着せ替えている。健康でありたい願いや感謝のしるしによってデコレーションされたそれは、みんなの願いの博物館である。

住所:茨城県那珂市下大賀1145
電話:029-296-0223

 

 2015年3月20日 発行
著 者 :森作 勇哉(常磐大学コミュニティ文化学科)
写 真 :森作 勇哉(常磐大学コミュニティ文化学科)
監 修 :塚原 正彦 常磐大学教授
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