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瓜連まちの風土記 第36巻

瓜連まちの風土記 第36巻

北城地区と田園風景

 

【北城集落の景色】
里と森の博物館

 坂の向こうにアニメでみたことがある
 夢の世界がひろがる
36表紙
◆長い一本道の坂を下るとそこには森と田んぼと空がまじわる異次元の空間がひろがる。
◆高くそびえる建物もなくあるのは先祖の営みを守り続けている古い家々のまち並みと畑だけである。
◆耳を澄ませば動物たちの声や虫たちの囁(ささや)きが聞こえてくる。
◆すべてがかかわりあって完結する幸せの空間で、私たちは、食べる達人、景観づくりの達人に出あうことができる。

私は、古き良き時代の
日本のふるさとの風景が大好きです。
といっても私はその風景を
見たことは一度もありません。
それは私が、ずっとあこがれている
イメージの風景です。
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長い一本道の坂を下ると
そこには森と田んぼと空が見事にマッチした
田園風景がひろがっています。
坂をおりきるとさっきまで私が歩いていた
場所とはちがいすぎ
どこか異次元の世界にでも
迷い込んでしまったかのような
不思議な感覚につつまれます。
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そして、ふと我に返った時
目の前には
手入れがゆきとどいた
立派な畑がひろがります。
耳を澄ませば動物たちや虫たちの
囁(ささや)きが聞こえてきます。
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瓜連は、高い建物もなく
騒音を出す車もほとんど走っていません。
すっかりさびれてしまってはいますが
スーパーもあれば、コンビニもあります。
ハウスメーカーの住宅も点在しています。
どこにでもある田舎の風景が
ひろがっています。
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でも、歩いていて何となく
居心地のよさが感じられます。
それは、どこまでも高くて青い空と
地平線の彼方まで見渡せる
景色がひろがっているからです。
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それになにより瓜連では
すれちがう人々と
気軽にことばをかわすことができます。
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そんなここちよい気分で
まちのはずれの小さな森まで
たどりつくことができました。
小さな森を通り抜ける道をつきすすんだ私は
夢の中で思い描いていた
日本のふるさとの風景に
出あうことができました。
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私の眼の前に出現した風景は
誰もがどこかでみたことがある
あの「ジブリ」の世界でした。
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坂を下った道の先に
きれいに手いれされた畑がひろがっています。
畑の向こう側には小さな家があって
畑仕事に精をだしている老人がいます。
彼は、よそ者の私に気がつくと
作業の手をおき、笑顔で会釈してくれました。
私はまるで映画の中にでも入ったような
不思議な気持ちになり
思わず会釈を返しました。
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小さな家の奥は、背の高い木が集まっている
黒い森におおわれています。
あの黒い森には
もっとステキな物語がひろがっている
そう考えると
自然と気持が高まり
私の歩く速度はますますはやくなります。
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そして、とうとう森にたどり着くと
あたりの雰囲気は、がらっと変わり
私をさらなる感動の世界へ誘いました。
今まで目にしていた
「となりのトトロ」の景観に代わって
「もののけ姫」の世界が出現したのです。
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昼間でも真っ黒な世界は
時々さしこむ木もれ日により
時々小さな生命が顔をのぞかせます。
そこで、じっと耳をすませば
生きとし生けるものの歌を
聞くことができます。
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人がつくった自然が
まちにたくさんのこされている瓜連で
私たちは、日本のよきふるさとを思い出し
幸せを感じることができます。
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 2015年3月20日 発行
著 者 :清水 るりこ(日本地域資源学会)
写 真 :森作 勇哉(常磐大学コミュニティ文化学科)
監 修 :塚原 正彦 常磐大学教授
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