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瓜連まちの風土記 第35巻

瓜連まちの風土記 第35巻

北城地区と田園風景

 

【瓜連の生活風景】
生活風景の博物館

 瓜連の小さな風景の一つひとつから自然と
 ともに生きたふるさとのカタチがみえてくる
35表紙
◆里山につながる一本の道、畑をつらぬく線路、そして果てしなく続く空。
◆どこにでもある瓜連の風景は、その下で働いている人や聞こえてくる音に耳をすませば、いままでみえなかった、聞こえなかった宝物がみえてくる。
◆瓜連をゆっくり歩いていると、不思議な宝物にめぐりあうことができ、夢や感動を抱くヒントを得ることができる。

はじめに私たちが降りたった
静駅の風景を紹介しましょう。
静駅は水戸駅から水郡線で
9つ目にある無人駅です。
電車が一時間に一本しか来ない静駅に
いるととてもゆったりした時間を
感じることができます。
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無人駅には改札はありません。
誰でも気軽にホームに立って
今やってきた方に視線をうつすと
まっすぐに果てしなく伸びつづける
一本線のレールがみえてきます。
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さっきまで自分を乗せて
ここまで運んできた電車が
とおってきた道であるはずなのに、
無人駅から一本につながるそれをみて
ふり返ると
何かすごく感動します。
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私を運んできた電車が
次の駅に出発しました
すると音が消えあたりはシーンと
静まりかえってしまいました。
駅にたたずんで
次にどんな音が聞こえてくるかを
想像しながら、目を閉じてみます。
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すると、小鳥のさえずりが聞こえてきて
なぜか幸せな気分になります。
無人駅で、ただ耳をすませている
それだけなのに
ゆっくりとした時間がすぎていきます。
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まわりの住宅に小さくぽつりと
とけこんだ静駅のベンチに座って
音を聞いているだけで
ここで暮らしている人々が
とてもうらやましく感じることができます。
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静駅を北城の森に向かって歩いてみましょう。
もともと空が大好きであった私にとって
いつでも、どこにも
高い建物や邪魔するものがなく
どこからでも頭上にひろがる
青い空と白い雲のツーショットを
ながめることができるこの道は
お気に入りになりました。
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私をつつみこむ大きな空に
果てしなく抱かれていると思っただけで
いやなこともすっかり忘れることができます。
空はいつでも、どこからでも
みることができます。
建物の中にいても
窓からものぞくことができます。
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でも、同じ空は二度と見ることができません。
田んぼ道や住宅、道路わきに咲く花
そして風、空の青さやその大空を高く飛ぶ鳥
その下で働く農家の人々や道行く人も
背景の空に浮かんだ雲を風が
運んでしまうから
景色は次々に変わりつづけます。
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私の歩いた道はきっと日本のどこにでもある
風景なのかもしれません。
しかし、時のうつろいとともに
変わりつづけていく風景には
ふたたびめぐりあうことはできません。
そうであるからこそ
一瞬一瞬のその風景を
目に焼きつけたくなります。
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瓜連の空気を胸いっぱいに
吸い込みながら
瓜連の空を見あげてみると
心からそう思えます。
瓜連の生活風景が
今日、私に素晴らしい時間を
与えてくれています。
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あなたは宮崎駿さんの作品
「となりのトトロ」を知っていますか。
北城集落の森は
「トトロの森」に大変よく似ています。
日本のふるさとがありのままに
遺されているのです。
ここでは、誰もがたくさんの自然と
ふれあうことができます。
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くにゃくにゃと曲がった道の向こうに
田んぼがひろがります。
ここにいると
ゆったりと流れる時間を
感じることができます。
この森と里山は
この土地で暮らしている人々が
知恵とチカラをわかちあいながら
つくりだした芸術作品です。
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静かな時が流れる無人駅
果てしなくひろがる空
そして人がつくった北城の森
今日私がであった
このまちの生活風景は
人と自然がかかわりあって
ともにつくりあげたステキな宝物でした。
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こんなステキな宝物に囲まれて
生活している瓜連の人々が
とても幸せそうに感じた一日でした。
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 2015年3月20日 発行
著 者 :清水 るりこ(日本地域資源学会)/内田 健太(常磐大学コミュニティ文化学科)
写 真 :森作 勇哉(常磐大学コミュニティ文化学科)
監 修 :塚原 正彦 常磐大学教授
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