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瓜連まちの風土記 第16巻

瓜連まちの風土記 第16巻

らぽーると瓜連小学校

 

【我が家のお庭】
自然を読み解くアートカレンダー

 祈りは、人と人を結ぶための、
 人をおもいやる心を育む
16表紙
◆通りから裏道に入ると住宅街にはりめぐらされた細い道が開けている。その道をゆっくり歩いてみると、美しい庭が次々に目に飛び込んでくる。
季節の植物たちがきれいに育ち、風にゆれ、通りゆく人を出迎えてくれる。瓜連に暮らしている人々は、季節とともに植物を愛で、それを近所に
お裾分けしようとして庭づくりに情熱をかたむけている。彼らの庭をみれば、数字が羅列している紙のカレンダーを見るよりはっきりと五感で
季節の変化を読み解くことができる。

瓜連を歩いていると、それぞれの生活者が
工夫をこらしてつくりだしたこだわりの庭が、
訪れるすべての人をあたたかく迎えてくれる。
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たくさんの種類の花に彩られ演出された
庭がある。

ひろい芝生で犬が伸び伸びと走りまわって
いる庭もある。
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片隅に井戸があり、和を演出している庭もある。

造園師のチカラをかりて、ていねいに剪定された
庭木たちが美しく輝いている庭もある。
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雑木をイングリッシュガーデン風に配置している
庭もある。

玄関先に、盆栽をならべて庭風の装いを演出
している家もある。
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小さなスペースを活かして、塀の上にミニトマト
を栽培している家もある。

朝顔のつたを張りめぐらせて塀に生け垣を
つくっている家もある。
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一軒一軒、どの庭にもそれぞれの家の個性が
光っている。

どの家の庭もとても美しく、そしてみる者を
あきさせない。

それはまぎれもなくアートである。

こんなステキな個性的な庭をつくるために、
このまちの生活者は、一体どれだけの時間と
労力をかけてきたのだろう。

庭というものは、そんなに簡単にできるもの
ではない。

美しい庭をつくるためには、草木が成長する
未来予想を描き、それを配置しなければ
ならない。

季節のうつろいを先取りして、肥料をあげたり、
水をあげたり、草取りをしたり、剪定したり、手間
をかけて面倒をみてあげなければならない。

そんな毎日の努力の成果が積みあげられて
はじめて美しい庭ができあがる。「美しい庭」
には庭をつくりながら守る人、すなわち
「庭づくり学芸員」が欠かせない。
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しばしの間、すっかり時を忘れ、
「庭づくり学芸員」は何と豊かな発想の持ち主
たちなのだろうと感心しながら瓜連のまちを
歩いていた。

そんなお庭の鑑賞をしていた私の心に刻み
込まれたある庭との出会いを紹介しよう。

赤やピンク、白、オレンジといったカラフルな
草花が植え込まれたとてもかわいらしい庭で
あった。色とりどりの草花の近くにポストや
置物など雑貨が配置されていた。それらの
造作物が配置されたことで、より一層草花の
いろどりが魅力をひきたてられていた。
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しっかりと手入れされた庭をみていると、
「庭づくり学芸員」の草花を愛出る気持ちが
伝わってくる。そのような演出が行われる
ことで、家も自然に美しくみえてくる。

来客する人は、必ず庭をみてその家に入るの
だから、庭でその家の印象が決まると言っても
過言ではない。庭はその家にとって顔となって
いる。

瓜連でたくさんの庭と出会うことができ、
まるで植物園の中を歩いているようで、
心がウキウキした。

植物園は花や木のミュージアムで、
鳥や虫たちも自然と集まって来る。

瓜連のまち歩きで、瓜連のまち全体がひとつの
ミュージアムなのだと実感した。

そして、私もまた将来は、この家に遊びに来たい
と思ってもらえるような庭をつくりたいとしみじみ
考えることができた。
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 2015年3月20日 発行
著 者 :清水 るりこ(日本地域資源学会)
写 真 :森作 勇哉(常磐大学コミュニティ文化学科)
デザイン :宗形 朱梨(常磐大学コミュニティ文化学科)
監 修 :塚原 正彦 常磐大学教授
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