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瓜連まちの風土記 第17巻

瓜連まちの風土記 第17巻

らぽーると瓜連小学校

 

【そば然】
私のデザインミュージアム

 思いをカタチにする
 アーティストと語りあい夢を探す
17表紙
◆生活者が主役で輝いてきた瓜連のまちには、思いをカタチにし、みんなと共有しながら暮らし楽しむ生き方が定着している。
◆まちを歩くと、暮らしのアーティストがデザインしたちょっとおしゃれなコレクションに出あうことができる。
◆彼らがデザインしたモノにふれ、語りあう体験をしてみよう。
今まで忘れていた暮らしのチカラやあしたをデザインする楽しさ、そして夢を持って生きることの価値をみつけることができるから。

瓜連に「そば然」というお店がある。暮らしの
アートと出会いの楽しみ、自分の暮らしを
輝かせるためのヒントを得ることができる
おいしいそば屋である。
そば屋にはみえないユニークな造作物が配置
されたエントランスを通り抜け、のれんをくぐり
勇気をふりしぼってお店に入ってみると、
不思議なミュージアム体験がはじまる。
17-03

お店の入り口の扉を開いて、はじめに目に
入ってくるのは、右側の棚である。
今までみたことがなかった個性的な看板や
ブックマーカーが展示、陳列され、私たちを
迎えてくれる。

店内に視線をうつしてみよう。
17-05

どれひとつ同じモノはない椅子やテーブルが、
まるでアート展示されているように配置されて
いる。そば屋の空間を演出しているのは、
家具にとどまらない。個性豊かな小物や雑貨
たちのハーモニーがこの場をより非日常性の
強いアートな空間に変身させている。何よりも
驚かされるのは、これらの家具や雑貨たちは、
いずれも店主がデザインしてカタチにした
オリジナルの作品であるということである。
17-07

はじめは、そばを食べてみようという動機で
おそるおそる入ったお店であった。
しかし、これらの個性的な作品に演出された
空間に足をふみいれ、それらにふれる体験を
しているうちに、この店は、アートを体験しながら
そばを食べることができるミュージアムであると
確信し、むしろそれを楽しんでいた。
17-09

そう考えると、いろんなことがみえてくる。
「そば然」という名前も気になってくる。
そして、店主にその由来をを聞いてみた。
「然」は、お孫さんの名前であるという。
「そば屋」になぜ、お孫さんの名前をつけて
しまったのだろうか。
そんなあたり前の常識をふりかざしていては
「そば然」は楽しむことはできない。

なぜなら、「そば然」は、「そば屋」が主役では
なく、店主の思いや彼の学びの成果、生きる
カタチを表現するオールバイマイセルフの
ミュージアムであるのだから。彼がいま最も
愛しているお孫さんの名前がつけられるのは
実に理にかなっていることがみえてくる。

「そば然」の店主は、思いをカタチにして
表現する「ふるさとのアーティスト」である。
彼がつくりだしたモノにふれ、彼と会話して
いると何となく楽しくなり、あしたへの夢が
うまれてくる。
17-13

彼のそば屋歴はまだ5年ほどだという。
近所に大変おいしいそば屋があったらしい。
そのおやじさんが亡くなってしまった。
いつも食べていたあのそばをもう一度
食べてみたい。
評判がいいいろいろなそば屋を食べ歩きした
けれど同じ味はみつからない。
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それなら自分でやればいいと考えた
アーティストは、本を読み、人に聞いて、
自分の口で確かめて、独学でそば打ちを
研究した。
いろいろやって、おいしいそば粉を、おいしい
ままの状態に保存すれば、誰が打っても
おいしくなるという法則がみえてきた。
17-17

そして、アーティストは、そば粉を研究した。
そして、寒暖の差があり、太陽をいっぱい
あびて育った水府のそば粉にこだわり、
その加工を研究し、みがきあげた。
お店で「おいしいソバ」をだすだけなら
それでいい。
しかし、アーティストである彼は、それで満足
できなかった。
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彼でしか発信できないメッセージを
表現したいと考えた彼は、
女性のお客さんには親しみを込めて、
もりそばの上に葉のカタチをしたソバを
のせてだした。
この遊び心こそ、彼がアーティストである
ゆえんである。
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アーティストの職歴も実に彼らしい。
元々の家業は酒屋であったらしい。
その後LPガス屋の業態を変え、
「白と茶」という喫茶店を35年間
経営してきたという。

「白と茶」には、茶色い色のコーヒーと
白いミルクという意味に加え、
「玄人茶」ではない「素人茶」という
メッセージが表現されているという。

アーティストには、現在東京で写真の
仕事をしている娘さんがいる。
いまの彼のシゴトは、彼女がデザインした
ものをカタチにすることに喜びを感じている。
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ステンドグラス、革のブックカバーやしおり、
そば用のトレイなど、娘とアーティストの
共同作品が、店中にところせましと並んでいる。
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アーティストは、いつでも語り表現している。
モノを創造するチカラの原動力は
つねに反骨精神にあるのだから、
器用と言われるのは嫌!で、いい感性ですね
と言われたいといつも言っている。
僕の作品は、発想が95%で、
つくるこだわりは5%と主張する彼は、
「ひとりこだわりとひとりよがりは紙一重
だからね」と言って笑っていた。
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瓜連の「そば然」を訪れ、
ふるさとのアーティストと語りあえば、
自然と自信がわいてくる。
そして、きっとあしたへの夢を
みつけることができる。
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17-32
そば然
住所:茨城県那珂市瓜連1317-3
電話:029-296-0084

 

 2015年3月20日 発行
著 者 :大内 彩夏(常磐大学コミュニティ文化学科)/清水 るりこ(日本地域資源学会)
写 真 :森作 勇哉(常磐大学コミュニティ文化学科)
デザイン :宗形 朱梨(常磐大学コミュニティ文化学科)
監 修 :塚原 正彦 常磐大学教授
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