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瓜連まちの風土記 第18巻

瓜連まちの風土記 第18巻

らぽーると瓜連小学校

 

【瓜連生活弁当】
ふるさとの恵みと知恵が
つまった宝の箱

 世界でたった一つの瓜連の
 大地の恵みの博物館
18表紙
◆農家のお母さんたちが、その日、瓜連の大地で採れた恵みを楽しく味わい、元気になれるようにとの願いをこめてつめた
宝の箱がある。
◆光と風を読みながら知恵とチカラで育てられた大地の恵みは、家族の健康と成長を願うお母さんの魔法により、おいしい
宝物に生まれ変わり、まち中に届けられる。農家のお母さんの知恵がいっぱいつまった生活弁当は、世界でたった一つの
その日限りの瓜連の大地の博物館である。

瓜連へ行ったら、ぜひ食べてみてもらいたい
ものがある。

それは、JA常陸瓜連加工所で、お母さんたちが
つくる日替わりのお弁当である。
18-03

加工所に一歩足を踏み入れると、おいしそうな
においで食欲がわきあがってくる。

テーブルには、お弁当がずらりと並んでいる。
ざっと50個はあるだろう。
18-05

ご飯入りの幕の内とおかずだけのお弁当。

瓜連では、ご飯だけ家から持ってくる人も
いるからそれにあわせてこのカタチになった。

いまちょうど、これからからあげをつめる
ところである。

ご飯は最後に炊きたてを...というのが
お母さんのこだわりである。
18-07

今日のメニューは、鮭の塩焼き、鶏のからあげ、
煮たまご、マカロニサラダ、野菜(玉ねぎ、
にんじん、ピーマン、ごぼうはどれも採れたて
である)と豚肉の炒め餡かけ、ナスの煮浸し、
しば漬け。
そして瓜連の田んぼでとれた炊きたてご飯の
まん中には、手づくりの梅漬けがのる。
着色していないから、梅そのものの色が
出ている。
そしておいしい!これが本当に!
18-09

毎日、市役所などから注文が入る。

一日平均は50個。法事、集落の行事には
盛皿料理もつくる。

遠足にはおにぎりだ。

メニューは一週間単位の構成で、前日と
重ならないように工夫している。
18-11

お弁当の注文が350~400個入ることもある。

そういうときは朝4時に出勤する。
コンビニ弁当とはちがい、余計な添加物は
使われていない。

そして、ほとんどの食材は地元でつくられた
もの、野菜は、お母さんたちの手づくりである。
18-13

生活弁当には歴史があった。

農家へ嫁いできたけれど、農業も農家の
暮らしも知らなかったお母さんたちの手習い
からはじまった。
18-15

彼女たちは、農について何一つ知らなかった。

知らないコトを知りたいと思う人たちが集まって、
作物の種類について勉強した。

いつどのように種をまき、それを育てて収穫
するのか。

農作業の初歩の初歩から勉強し、互いに
学びあった。
18-17

お母さんたちは、農の知にふれることで、
学んだ成果を活かすことで、とびきりおいしい
野菜をつくることができるようになった。

そして、おしみないほどの手間をかけて
つくられるお母さんたちの手づくり野菜は、
スーパーで売られているような利潤を
うみだすために大量に生産している野菜
よりもはるかにおいしかった。
18-19

学びが深まっていくと、塩やしょうゆ、酢など
普段あたりまえに食べている調味料にも
興味関心がひろがっていった。

そして、素材の良いモノだけを選び、添加物を
一切使用しないお母さんたちのこだわりの
お弁当ができあがった。
18-21

お母さんたちの農の学びは、人と人、人と
情報を結び、料理や家事の相談に、そして、
お母さんたちの結びつき、新しい生きがい、
やりがいにまで発展していった。
 

「千切り大根やかんぴょうも手でつくるのよ」

「機械を使わないで手で切ると味がちがって
くるから」

「干しシイタケは日光を浴びることが大事なの」

今日の生活弁当を指さしながら、お母さんは、
うれしそうに教えてくれる。

お母さんたちは、学校への出前授業もしている。
この頃、休耕田が増えている。それを解消する
ためにはじまったソバの栽培をきっかけに、
保育園の子どもとお母さんを招待するソバの
教室を開催した。幼稚園や学校からの要望が
あいつぎ、いまでは人気の出前プログラムに
なっている。
こんなぜいたくな食べ物をいただくことができる
のだから、瓜連の子どもたちは幸せである。
18-25

「今の時代にあうようにするにはどうしたら
いいのだろうね」
「最初に始めた人たちは90代になったの」
「今活躍しているのは、60代から70代」
「この前、20代の人もやっと一人、お弁当を
手伝ってくれるようになった」

生活弁当で町に元気を届けてきたお母さん
たちの次の課題は、この活動を新しい世代に
引き継いでいくことにある。

みんなの美味しい顔が見たいという思いを
実現するために、今日もお母さんたちは
がんばっている。

このお弁当は、瓜連の大地の恵みとお母さん
たちの知恵がいっぱいつまった宝の箱である。
18-27

 

18-28
JA常陸 瓜連加工所
住所:〒319-2102 茨城県那珂市瓜連229-8
電話:029-270-9130 FAX:029-270-9131

 

 2015年3月20日 発行
著 者 :清水 るりこ(日本地域資源学会)
写 真 :森作 勇哉(常磐大学コミュニティ文化学科)
デザイン :宗形 朱梨(常磐大学コミュニティ文化学科)
監 修 :塚原 正彦 常磐大学教授
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